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ふざけんなぁ!! 8

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「静雄さんの馬鹿」
『帝人、安心しろ。門田の食事は、新羅が届けてやるから。な、新羅?』
「勿論さセルティ♪ 君の願いは何だって叶えるよ♪♪」


☆★☆★☆


「みっかどぉぉぉぉぉぉ♪♪ 見てろよ、いくぜぇぇぇぇぇぇぇ!!」

カーテンから勢い良く飛び出してきた【ONE PIECE】の主人公モンキー・D・ルフィの衣装を身に纏った彼は、余程籤の結果が嬉しかったのだろう。膝丈青ジーンズに赤シャツ、そして麦藁帽子を被り、ぶんぶんに手を振ってから、ステージに駆け上った。

「ああ、童心にすっかり還っちゃったねぇ。何処の悪ガキだって感じだ」
『似合うから許す』

コントローラーで入力した歌も、軽快な【ウィーアー!】だ。
ワンピースの第一話から流れていた有名なオープニング曲は、帝人も勿論知っている。
臨也を追い掛け回す際に散々鍛え抜かれたのであろう……、豪快で轟く静雄の声は、マイクなんか要らない程声量があり、また男性歌の強みと、海賊の元気さともばっちり合った。
マイクを振り回し、ノリノリで歌う彼が本当に楽しそうで。
変な企画した事を後悔し、気弱になりかけた自分にとって、一番の清涼剤となった。


「凄い♪ とっても似合ってますし、格好良かったです♪♪」
88点の高得点をつけ、笑顔全開になって帰ってきた静雄を、帝人も心底嬉しく、惜しみない拍手で迎えた。
「俺は、お前に褒められるのが一番嬉しい」
彼はさっきと同じ場所に腰を降ろすと、そのまま彼女の体をひょいっと持ち上げ、再び自分の右膝にちょこんと座らせる。
(ふえ?)
彼がにこにこと差し出してきたサンドイッチを、帝人はありがたく受け取りぱくりと喰らいつく。
どうやら、餌付けとお膝抱っこも続行するようだ。


「静雄さんって、意外と麦藁帽子も良く似合いますね♪」
「おう、ありがとよ♪ ルフィみたいな野生児に見えるか?」
「はい、とっても」
いつもバーテン服か黒いジャージ姿ばかりなので、赤いシャツや青いジーンズのように、色のある姿が新鮮に映る。
「今すぐ海賊船に乗って、大海原に行けちゃいそうです♪」
「へへへへへ、嬉しいぜ。俺、実はさ、将来田舎に引っ込むのが夢なんだ」
「ふえ?」

今度は帝人の方がきょとんとする。
いきなり何を言い出すのだ、この男は。

「無機質なビル群より、生きてる温もりのある森の木々がいいんだ。都会の喧騒を聞くより、川のせせらぎや鳥の声の方がほっとするし、チンピラ相手にするより、野生のイノシシや熊と戦いてぇ」

前半は兎も角、後半はかなり寒い。
どんな秘境に行くつもりだ?

「俺の両親、今四国にいるのは知ってるだろ?隣家まで行くのに10キロかかるっつーぐらいすんげー山奥にいて、毎日ロクロ回してる。まぁあんま売れてねぇ陶芸作家ってやつさ。で、ゆくゆくは俺もそっち行きてぇんだ。農業や林業の職ならあるっつーし、結構俺向きじゃねぇ?お前が大学卒業したぐらいが潮時じゃねーかと思ってる。楽しみだなぁ」

にこにこ夢を語るのは勝手だが、帝人は顔に出しはしなかったが実はぞっとした。

折角念願の都会に出てきたのに、七年後は長閑で変化がない所に逆戻りなんて。
隠居する年齢だったらまだしも、22の働き盛りで連れて行かれるなんて冗談じゃない。

それに赤いトラクターを駆り、泥にまみれて苗を植える作業をする静雄なんて想像もしたくない。
それよりセルティのコシュダ・パワーの後部座席に乗って、二人一緒にチンピラをボコにする方がぴったり合う。

(……おちつけ、私。大学卒業まで、ストレートで出たとしても、まだ7年もあるんだ。静雄さんだって、まだ憧れだけだ)
田舎暮らしがどんなに過酷か、一度体験させるのも良いかもしれない。
機会を作って帝人の実家に連れて行き、村の寄り合い所に放り込み、恐怖の田植えや稲刈り、それかお祭りの準備に携わらせたら、きっとキレて暴れるか懲りるだろう。


「静雄、帝人ちゃん、セルティがこっちを向いてくれって」

新羅に声をかけられ、二人揃ってセルティの方へと顔を向けると、デジカメを両手でしっかり持ち、待ち構えていた彼女がパシャリとフラッシュを焚いた。

「え? え? ええええええええ!! ちょっと、セルティさん待って!?」

静雄のルフィ姿は兎も角、己の恥ずかしい白スク水姿を残されるなんて冗談じゃない。

「セルティさん、駄目ですよ、みっともないから消してくださ~い!!」
あうあうと手を伸ばすが、首なしライダーは喜々として、身に纏う影でどす黒いハートマークを飛ばしながら、PDAをこっちに差し向ける。

『見てくれ、とうとうお前達のベストショットが撮れた♪』

えっへんと胸を張り、デジカメを突きつけられる。
画面に映し出された映像を静雄と二人覗き込めば、麦わら帽子の男に、帝人のロリっぽい水着姿は、夏という季節にばっちり合い、例えお膝抱っこでも、先程のバーテン服とは雲泥の差でよく馴染み、エッチ臭さも無く全く違和感がない。

静雄がぽくっと、とっても嬉しそうに顔を輝かせた。
「なあ、後でこの画像をくれ。俺の携帯の待ち受けにする!!」
『判った、任せておけ♪』
ぐっと親指が立てられた時点で、帝人は心の中で白旗をあげた。

嬉しげな黒バイクを、幸せそうに目を細めて眺めている闇医者を加えれば、民主主義な多数決を取っても3対1で負ける。
ましてや戦闘能力皆無な自分だ。
実力行使でデジカメの映像を消すために飛び掛ったとしても、タッグを組んだ黒バイクと池袋の自動喧嘩人形を相手にして、敵う筈ない。

お寿司のお皿に手を伸ばし、タマゴの握りとアナゴを頬張った。
続いて皆に突付かれまくって、中身を大きく減らした伊勢海老のグラタン皿を手元に引き寄せる。
次の順番が回ってくるまで、自棄食いに走ろうと決めた。


作品名:ふざけんなぁ!! 8 作家名:みかる