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ふざけんなぁ!! 8

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勝利しか見えていないワゴン組に不戦敗の文字はなく、連続で貧乏籤を引いた門田は、やけっぱちも手伝い、根性で歌いきった。
73点。

「おい、司会強奪犯二人組み!! もう残り時間も僅かなんだろ? だったら着替えてもいいだろっつーか、着替えさせろやコンチクショー!!俺だけまだまともにメシ食ってねーんだぞぉぉぉぉぉぉ!!」

「うーん、そうよね。更衣室二つしかないんだし、帰りにバタバタするのもね」
「というわけで、門田さんOKっす♪」

彼の怒り狂った罵声のお陰で、今後自分が歌を歌い終えた場合、自分の着てきた服に着替えるのが認められた。
帝人もめちゃめちゃ嬉しかった。
便乗し、喜々として元の来良の制服に着替える事ができたのだから。


「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!!」

そして静雄が、ここでまさかの大嵌りとなった。
トムがひらひらと振っているのは、幼稚園児が被るような黄色の丸い帽子、それと白シャツに真っ赤なスカートだ。
あんなにデカイ図体なのに、【ちびまる子】のコスして【おどるポンポコリン】なんて。
だらだらと汗を噴出し固まっている静雄に、帝人はとっても良い笑顔になった。

「良かったですね静雄さん。私のタラコのキグルミや、門田さんのレオタードより全然マシじゃないですか♪」
「み、みかど。お前、笑顔だけど何か怖いぞ!!」
「静雄、男なら根性見せろや。それとも恋人の前で尻尾を巻いて敵前逃亡するか? 池袋最強が聞いて呆れるな?」
「門田てめえ、敵チームの人間じゃねーのかよ!?」
「細かい事は気にするんじゃねぇ」

帝人と門田に挟まれた上、それぞれの肩を叩かれ、気弱い男に逃げ場はもうどこにもなかった。


「帝人は絶対見るなぁぁぁぁ!!」
「仲間外れは嫌です♪」
「セルティィィィィィィィ!!」
『はいはい、帝人、ちょっとゴメンね』
「うひょぉぉぉぉ!!」


武士の情けか今度はセルティが己の影を伸ばし、再び帝人の目をしっかり覆った。
後日、この時のアルバムが平和島家に回って来た時、マイク片手にちびまる子に扮した静雄の写真は、見てるこっちが可哀相に思うぐらい、悲壮感漂う涙目になっていた。
62点。


次に籤を引いた狩沢は「来た来た【シェリル】ぅぅぅぅ♪」と、狂喜乱舞した。
紺色の軍帽に黒い長ブーツ、しかも黒いショートパンツに赤いサスペンダー姿になった彼女は、鞭をふりふりマクロス・フロンティアのオープニング曲【トライアングラー】を熱唱し、堂々の98点をマークした。
この奮闘でチーム差はなんと9点まで縮まって、最後のトリ対決で決着がつく事になった。

「ゆまっち、後は頼んだわよ!!」
「任せるっす♪♪」
『新羅、行け!!』
「OKセルティ♪ 僕の歌は全て君に捧げるよ」


波に乗った門田チームの引きにつられたか、新羅は籤引きで、最初に自分自身が抱えて持ってきてしまったウエディングドレスを引き当ててしまった。
「何でモーニング娘の、【ハッピー・サマー・ウエディング】? 嫌、歌は別に何だっていいんだ。私が言いたいのは、どうして愛する人に着せたいと切望していたドレスを、私自身が着なければならないかということで……」
「御託はいいから、とっとと行け」
静雄の長い足が、新羅の背を蹴り飛ばす寸前、セルティの伸びた影が恋人を包み込み、がっちりガードを固めた。

『泣くな新羅、私も付き合ってやるから』
「セルティ♪」
『どこかにタキシードはあるか?ああ、それと、誰かカメラマンやってくれ、頼む』

直ぐに面倒見の良いトムが、白い礼服を見つけてきてくれた上、デジカメも受け取りぐっと親指を立てる。
新羅は益々目を潤ませ、両手を組み恋人を見上げた。

「ああ、今日が二人のセレモニーになるなんて、思ってもみなかった行幸だ。感激だよセルティ♪ 私は一生君を幸せにするからね♪」
『タキシードは私が着るからな。男女逆転なんて面白い♪』
「は?」
『お前もほら、さっさと行け』

皆が楽しくコスプレをしているのを見て、どうやら彼女も加わりたくなったようだ。
うきうきと浮かれた足取りで更衣室に向かおうとする彼女の背に、新羅は妖怪【子泣き爺】のように、タックルをかけしがみついた。
「駄目、駄目駄目駄目!! そのタキシードは私が着る!! これだけはいくら愛しい君にだって譲れない!!」
『新羅、離せ!!』
「やだやだやだやだぁぁぁぁぁ!!」
『ドレスを引き当てたのはお前だろ?』
「それでも嫌だぁぁぁぁ!!」

「……うぜぇ……うぜぇ、うぜぇ!!……」
寝てる所を起こされた熊のような、静雄の恐ろしい低重音が響き渡った。
「いつまでも女々しくぐずってんじゃねーよ新羅、てめぇそれでも男……ふがっ……」
帝人が大慌てで静雄の口に、ホットドックを詰め込んだのだ。
ここで暴れられたら最後、高額の弁済が待ち構えるだろう。
無駄な出費はゴメンだし、いつもはどんくさい帝人だったが、人間、死に物狂いになれば何でもできる。
きゅっと彼の体に抱きつき、胸にぐりぐり頭をすりつけ、上目遣いで見上げてみた。

「静雄さんの作る、甘いカクテルが飲みたいです♪ ミルクベースでチョコ味がいいんですが、できますか?」
「よし待ってろ♪」

可愛い男は、ダッシュで簡易バーへと消えてしまった。
『グッジョブだ帝人♪』
セルティがPDAと親指を立てて突きつける隙を突き、新羅がタキシードを奪い、すたたたたたと更衣室に消えていった。

『あー。あたしの服ぅぅぅぅぅ!!』
がっくり項垂れるセルティは可愛かった。
残されたウエディングドレスを手に持ち、とぼとぼと衣装を着替えに行く彼女の背には哀愁が漂っている。

「……あのさ、別に彼女が着替える必要ってねーんじゃねーの?……」
トムの突っ込みは最もだし、帝人もはふっとため息をつく。
「セルティさんは純真なんです。多分気がついてないんじゃないんですか?」
「そうだな、彼女は正真正銘の妖精さんだったしな」

念願のツーショットを果たした新羅は、涙に暮れながらウエディングドレスを纏ったセルティの手を取り、ステージへと上がった。
そして【ハッピー・サマー・ウエディング】を難なく歌って60点を叩き出したのだが、ここで門田チームから大ブーイングが飛んだ。

「ねぇねぇみかぷー、確かコス衣装拒否は、マイナス100点だったわよね?」
「私とセルティは一心同体だ!!」
「そんなの関係ないっす」
「そうだよな。俺だって着たくも無い真っ赤なゴスロリドレス姿で歌ったのにさ、何で闇医者先生だけタキシードOKなんだ?」
「異議申し立てがあるのなら、歌い切る前にするべきだった」
「そんなの私達関係ないもん」

完璧確信犯な三人に、落ち度ばっちりなこちらが理路整然と反論なんかできる訳もなく、主催者な帝人もこっくり頷くしか手立てがなくて。
よって、マイナス100点制度が初めて発動されてしまい、我が通った三人が血走った目で総合点数を眺める。

「……ってことは?……」
「既に501対532だから」
「おお、もう俺達不戦勝じゃねーの!?」

ばんざーい、ばんざーい♪と、歓声が響き渡る中、『新羅ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』と、黒い大鎌が具現し宙を舞う。
作品名:ふざけんなぁ!! 8 作家名:みかる