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【6/12サンプル】rivendicazione【臨帝♀】

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ふらふらと人にぶつかりそうになる僕と違い、紀田くんは器用に人を避けて歩くのを見てどこか寂しい気持ちになった。あんなに一緒だったのにっていうフレーズが頭を過る。

「紀田くんもすっかり都会の人になっちゃったんだね……」
「うん。それは単に運動神経の差だと俺は思うな」
「違うよ。慣れの問題だよ」
「帝人もそういうとこ全然変わってない」
「紀田くんだって」
「いや違う! 俺は変わった! ふっふっふ、どこが変わったかって? よっし三択で選べよ~」
「そういうのはいいからはやく教えてよ」
「たはー! 帝人ってばクール! では教えて進ぜよう! じゃーん彼女が出来ましたー!」
「? 紀田くん、エイプリルフールは先週終わったよ? あ、その彼女は紀田くんにしか見えなかったりする?」
「俺の妄想じゃないから! ちゃんと実在してる人間と付き合ってるから!」
「…………ぇぇぇぇえええええ! ? 嘘! ?」
「嘘でもねえよ! 帝人、俺のことなんだと思ってるの! ?」
「えーうわーそっかーそうなんだ……」

まさか、パソコンのメールのアカウントを「ラブハンターまさ」なんてふざけた名前にしている紀田くんに彼女がいるなんて思ってもみなかった。それどころかメールの内容なんて日々のナンパ記録のようなものだったのに。

(そっか……紀田くん彼女いたんだ……)

さっきと比べ物にならないくらい寂しさを感じたけれど、それよりも驚きのほうが大きい。

「ていうかメールで言ってくれても良かったのに」
「メールで報告するのもどうかと思ってさー。こう、あらためて文章にすると恥ずかしいじゃん?」
「今日紹介してくれても良かったんだよ?」
「や、俺もそうしようと思ってたんだけど、彼女に『久しぶりに会うのに邪魔しちゃ悪いから、また今度ね』って言われた」
「えっ、すごくまともな人なんだねえ……」

心底驚いてしみじみそう言うと、紀田くんは「だから帝人は俺のこと一体なんだと思ってるの! ?」とジェスチャー付きで憤慨した。顔を見合わせて一瞬間を置いたあと、僕たちは声をあげて笑い出した。
彼女が出来ても紀田くんは変わらない。僕が知ってる紀田くんのままだ。そのことに安心して目を細めた。

「今度紹介してよ」
「おう」

そこで、ポケットに入れていた携帯がメールの着信を告げてきた。僕は文面を見て「あっ」と足を止めた。