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【6/12サンプル】rivendicazione【臨帝♀】

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「どうした?」
「ごめん紀田くん、これからここに行きたいんだけど、場所分かる?」

メールに添付されていた地図を紀田くんに向ける。

「どれどれ……って、この通り沿いじゃん、すぐそこだよ。でもなんだって帝人はこんなとこに行きたいんだ?」

携帯から顔を上げて歩き始めた紀田くんは不思議そうに首を傾げた。僕はそれに対し「会っておきたい人がいるんだ」と答える。だけど紀田くんは驚いたように目を見開いた。今度は僕のほうが不思議そうな顔を紀田くんに向けた。なぜこんなに驚いているのだろう。

「帝人、それってまさか……」

紀田くんの怪訝な表情を見て僕は直前の会話の内容をようやく思い出し、「えっあっ違う違う!」と声を荒げる。

「彼氏とか、好きな人とかそういうんじゃなくて、会っておかなきゃいけない人っていうか、とりあえず紀田くんの考えてることは完全に誤解だから!」

両手を振りながら歩いていたことがいけなかったのか。否定するのに必死で注意力が散漫になっていたのか。もとより僕には運動神経反射神経なんてものは備わっていなかったのか……――僕は何かにぶつかった。

驚いて目の前をよくよく見てみると、そこには何かのキャラクターの等身大と思しき看板がある。

なぜ歩道のど真ん中に看板が?

きょとんと目を丸くしていたら、看板の後ろから男女のふたり組が現れた。なんで。目がさらに丸くなる。すると紀田くんが「あ、狩沢さんに遊馬崎さん、お久しぶりっす」と突然挨拶をするものだから、思わずぎょっとして振り返ってしまった。

「あれー紀田くんじゃん」

どうやらこのふたりと紀田くんは知り合いらしい。なんとなく気が引けて一歩後ろへ下がる。でもその直後に女性のほうに「そっちの子はー?」と水を向けられてしまった。
何を言えばいいものかと泡を食っていたら、紀田くんが僕の肩をぽんと叩いた。
「俺の幼馴染なんすよ。今日田舎から出て来たんです」
左の女性が狩沢さんで、右の男性が遊馬崎さんなと紀田くんは紹介してくれた。一体この三人はどういう知り合いなんだろうとそればかりが気になってしまい、自己紹介するタイミングが少し遅れてしまった。慌ててぺこっと頭を下げる。

「あの、竜ヶ峰帝人と言います」

名前を告げるとふたりは難しい顔をして首を捻った。

「ペンネーム?」と問いかけてきたのは遊馬崎さんのほうだ。

苗字も名前も珍しいから、「それって本名なの?」と疑われるのは毎度のこと。やっぱりそう思いますよねと思いつつ「一応本名なんです……」と、ラジオネームやハンドルネームの可能性について議論しているふたりに口を挟む。だがそこでなぜかふたりの表情が変化した。いや、一変した。

「うそ! ? 本名! ? すごい!」
「ラノベの主人公みたいじゃないッスか!」

いきなりテンション高く喋り出したふたりの迫力に圧倒されてよろめきそうになる。話の内容も飛び交う単語もほとんど理解出来ず、ついには目まで回り出した。紀田くんがこっそり「一部の人間にしか通じない呪文みたいなもんだから流しとけ」と言ってくれなかったら頭から湯気が出ていたかもしれない。小説や漫画やアニメの話をしているらしいことは何となく分かるのだが、僕は紙の上で起こる事件よりも現実に起こる出来事のほうに魅力を感じる人間のため、ネットに親しんではいるもののオタク文化には疎いのだ。チャットや掲示板にはお世話になっているので用語ならそれなりに分かるし、実際使ってもいるけれど、目の前のふたりの会話にはまったく付いて行けない。すごいなあと思わず呆けてしまう。

するとそこへ「帝人?」と紀田くんとは別の男性の声が耳に入った。きょろきょろと声の発生源を探していたら、駐車場の端に会いたかった人の姿を捉え、僕は笑顔を浮かべる。

僕が「京平さん!」と言うのと紀田くんが「門田さん?」と言ったのは同時のことで、ふたりして「え?」「は?」と言ったのもこれまた同時だった。

「紀田くん、京平さんのこと知ってるの?」
「いやいやそれよりお前こそ門田さんのこと何で知ってるんだ?」
「あのね、さっき言ってた会いたい人って京平さんなんだ。京平さんは僕の母方のイトコなの」

紀田くんに彼女がいることを聞いた時の僕に負けないくらいの叫び声が紀田くんの口から迸った。そのあまりの驚きように僕のほうが逆に驚いたくらいだ。

「帝人、それマジか?」
「こんなことで嘘ついてどうするの?」
「いやー、今年一番の衝撃だったぞ……」

驚いているのは何も紀田くんだけではなかった。狩沢さんと遊馬崎さんまでもが「イトコぉ! ?」と騒いでいる。どうやらこのふたりも京平さんの知り合いらしい。世間て狭いなあと思わず感心してしまう。

「門田さん、イトコなんていたんスねえ」
「そりゃ俺にだってイトコくらいいるさ。お前たちに言ってなかっただけだ」

「確かに一々言うことじゃねえな」とワゴンの中に居た男性も同意した。京平さんが「こいつは渡草」と紹介してくれる。頭を下げて名前を告げようとしたけれど、それはかなわなかった。

 狩沢さんが往来で突然叫び出したからだ。

「ドタチンずるい! こんなハイスペックな子を隠して独り占めしてたなんて!」

そう言って狩沢さんはつかつかと僕に歩み寄り、僕の胸をがしっと掴んだ。

あまりに唐突な出来事に僕はろくに反応出来ず、そのまま胸を揉みしだかれてしまう。真剣な表情で一言「Fと見た」と呟いた狩沢さんは次の瞬間破顔して僕を抱き締めた。
そこで僕はようやく悲鳴をあげたのだった。もちろん周囲の男性陣も狩沢さんの突然の奇行に対応出来ず、僕の悲鳴を聞いてやっと我に返る次第だった。

「狩沢! お前、人のイトコに何してんだ!」
「えーただのスキンシップだよお。それよりドタチン、この子服で隠してるみたいだけどFカップもあるよ! ? 童顔巨乳でボクっ子ってこれもう二次元の存在としか思えないよね!」
「名前の仰々しさもさることながら、そうやって特徴を挙げると確かに二次元キャラっぽいッスねぇ」

遊馬崎さんが乗るものだから、さらに狩沢さんのテンションが跳ねあがった。

「でしょでしょー ! ? 本に吸い込まれちゃう女の子がいるんならー、うっかり本から飛び出しちゃった女の子がいても良いよね!」
「ありッス。全然ありッス」

京平さんが「お前らいい加減にしろよ」とふたりを諫めてくれなかったら、僕はやめてくださいも言えずに狩沢さんに抱き締められたままだっただろう。

解放された僕はよたよたとふたりから離れて紀田くんの陰に隠れた。いざとなったら紀田くんを盾にする。

「狩沢に遊馬崎。田舎から出て来たばっかの女の子怖がらせてどうするんだ」

京平さんは眉を吊り上げて怒るが、ふたりは全然堪えていない。「だってさー幼可愛い女の子がFカップでボクっ子なんだよ? 大人しくしてろって言うほうがおかしいよ。可愛い子を愛でるのは人間として当然の義務だし、巨乳を揉むのは礼儀でしょ。同じ女同士なんだから問題ないない」「二次元と現実の垣根を越えた存在に対する飽くなき追究ッスよ。それに自分は狩沢さんに同意しただけッス。手は触れてません」と不貞腐れている。