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【6/12サンプル】rivendicazione【臨帝♀】

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「さて帝人。午前授業で終わった今日、有意義に午後を過ごす方法とは何だと思う? 答えはそう、ナンパです」

「紀田くん、彼女いるんじゃなかったっけ?」

それともあれは嘘だったの。

思った以上に冷たい声が出たけれど、紀田くんはこのくらいではめげなかった。「大丈夫だ。俺の彼女は海よりも心が広いから、他の女をナンパしたくらいじゃ怒らない。むしろ頑張ってきてねと声援をくれる」と誇らしそうな顔をしている。突っ込むのも馬鹿らしいと言うか、おそらく紀田くんの彼女もナンパが成功するとは思っていないに違いない。

「ラブハンターまさの名に恥じぬよう今日もナンパに勤しみます。ということで付き合え帝人」

そう言って街に繰り出した紀田くんだったが、案の定釣果はゼロ。ボウズだった。
当然だ。あの口上で落ちる女性がいるのなら見てみたい。

(紀田くんに彼女がいるなんて奇跡みたいなものだなあ)

少し離れた場所から紀田くんのナンパの様子を眺めていたら「こら帝人! そんなに離れてちゃだめだろう!」と怒られた。

「ねえ紀田くん、僕がいる意味ってあるの?」
「女子が一緒だと相手も安心するだろう?」
「じゃあね、紀田くん。また来週」
「そんな冷たいこと言わないでもうちょっと俺に付き合ってくれてもいいと思うんだっ。よし分かった、ここは場所が悪いから移動しよう」

場所を移したところで紀田くんのナンパの成功率があがるとはとても思えない。

(でもまあ明日は日曜だし、もう少しくらい付き合ってあげてもいいか)

彼女に愛想を尽かされても知らないからねと言うと、紀田くんはとびきりの笑顔で僕の背中を押してきた。数年ぶりに会った友人をナンパに付き合わせる紀田くんも紀田くんだけど、それに付き合っている僕も僕だ。けれど池袋に出てきてまだ一週間と経っていない僕には紀田くん以外の友人もいない。紀田くんの誘いを断る理由はなかった。

「紀田くんが今付き合ってる彼女も紀田くんがナンパしたの?」
「いや、彼女のほうから逆ナンされた」
「ああ、なるほど。そうだよね、紀田くんのナンパに引っ掛かるような女の子なんていないよね」
「幼馴染の辛辣さに俺のハートはブロークン! おい帝人よ! 俺が何を言われても傷つかないと思ったら大間違いだぞ!」

 胸を押さえて痛がる素振りを見せる紀田くんに冷笑を浴びせていたら、ふと路地の奥に知った姿を発見した。

「園原さん……?」

同じクラスの女子生徒、園原杏里。

僕が一方的に親近感と憧れを抱いている人物である。彼女は僕よりも一、二カップは大きい立派なバストの持ち主だ。
それなのに僕と違って背筋がピンと伸びていて、堂々と胸を張っている姿はとてもカッコいい。
大人しそうなのにスカート丈が短いところも僕が憧れるポイントのひとつだ。制服を作った店で「来良の子はみんなこのくらい短くしてるよ?」と言われたのだが、平均よりも十センチは長い丈で仕立ててもらったうえ、僕は黒いタイツで足を覆い隠している。普段ズボンばかりを穿いて過ごしている僕に、このスカート丈はかなりハードルが高い。
友達になりたいなあなんて思っていたら、今日の委員会決めで幸運にも園原さんとクラス委員になることが出来た。ふたり同時に手をあげて、彼女も僕も互いに譲らなかったため、普通だったら男女各ひとりずつ選らばなければいけないところを女子ふたりにしてもらえたのだ。
ホームルームが終わってからこれ幸いとばかりに話しかけた僕は「すみませんが、用事があるのでその話はまた明日……」と速攻でフラれてしまい、結局紀田くんのナンパにこうして付き合わされているのだが、その彼女が薄暗い路地の奥で女の子たちに囲まれていた。

「ねえ紀田くん、あの人園原さんじゃない?」
紀田くんは僕たちとは別のクラスではあるが、入学式の時から彼女に目を付けていたようでさっそく声を掛けていたから認識がある。
「ああ……? これはもしやイジメ現場か?」
ひょいと覗きこんだ紀田くんが困惑した声で僕に同意を求めるのも無理はない。
もはやテレビの中にしか存在していないんじゃないかと思えるような古典的なギャル三人組が、園原さんの退路を断つように取り囲んでいる光景はベタ過ぎてちょっと現実味に欠けていた。漏れ聞こえてくる中傷内容もベタというかストレートというか。

「逆にいっそ清々しいね」
「ある意味陰湿とは程遠いな」
「イジメ自体が陰湿な筈なのにね」

そんな訳で僕たちふたりしてついうっかり悠長に建物の陰から様子見していた。
本当にうっかりしていた。ギャル三人組のインパクトが強すぎて、彼女らの後ろにはこれまた柄が悪い男が立っていたことを見過ごしていたのだから。

ギャルのうちのひとりが「ヒロシ! やっちゃって!」と言ったところでようやく僕はこれはヤバいと焦り出した。

助けに行かなくちゃ。

でもどうやって?

(イジメに気づかないフリして連れ出すとか……)

それが一番無難だろう。僕は紀田くんが隣にいることも忘れてひとりでイジメ現場に乗り出そうとした。

けれどそれは叶わなかった。

「イジメ? やめさせに行くつもりなんだ?」
「へ?」

見知らぬ男性が僕の肩を掴んでいた。そして何事かと目を丸くしている僕の肩を抱いたまま男性は園原さんたちがいるほうへ悠然と歩き出した。当然、男性に肩を抱かれている僕も一緒に歩くことになる。

「えっ? えっ……?」

何とも心細い声が僕の口から洩れた。

何この状況、意味が分からない。

でも男性は前を向いたままニヤニヤと笑って僕に取り合わない。それどころかそのままズンズン歩き続け、みんなの手前で突然立ち止まったかと思えば、ギャル三人組と園原さんの間に僕を突き入れた。みんながみんな、ギョッとしている。

(ええー、これ一体どうなっちゃうんだろう…… ! ?)