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【Secretシリーズ 3 】Mind -回想-

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次に目覚めたら、ハリーといっしょのベッドで寝ていてお互い裸とは、なんてたちの悪い冗談だろうと、ドラコは思った。

しかも、自分はハリーの腕の中にスッポリと納まり、安心しきって眠っていたらしい。
神経質で潔癖症をもてあましていたこの自分が、だ。

答えのパズルが何一つ組み合わない気分で、必死でこの状況を理解しようとした。
となりで眠っている相手は間違いなく、あのハリー・ポッターだ。
こんなにも癖のある黒髪など、そうはいない。

丸まった背中、規則正しい寝息。
暖かい肌。
眼鏡がない横顔。
ひたいの傷。
ドラコはそれのひとつひとつに触れたくて、しょうがなかった。
この指先で確かめたい。
思わず触れようと伸ばした指は、途中で止まる。

ひどく辛らつな言葉と態度で自分を見下ろした、彼の表情が思い浮かんだからだ。
あれは彼の両親のことで、自分が相手を挑発したときに見せたものだ。

ひどい記憶だけが、思い出されてくる。
ドラコは唇を噛んだ。
嫌われても当然だった。
いつも素直になれない自分が嫌だった。
それなのに好かれたいなどと、なんて虫のいい話だ。
ドラコは自分の身勝手さに、嫌気がさした。

ドラコはため息をつき頭を振ると、素早く周りを見回した。
窓から差し込む光はまぶしく、今は朝で、この部屋にまったく記憶がない。

そして……、ひどく頭が痛い。
誰かに頭の中に手を突っ込まれて、かき回されたような感じだ。
激しい揺れで吐きそうになっている、船酔いに近い気分だった。

ドラコは低く呻いた。

答えが出ずにベッドでグズグズしていると、となりのハリーが身動きをした。
ドラコは弾かれたようにからだを硬直させて、小さく震えた。
例えドラコに記憶がなかったにしても、自分たちの今のこの状況を見て、ハリーがどう言うか、とても不安で仕方がなかったからだ。
ドラコは引きつった顔のまま、ただハリーを見つめた。

もぞもぞとからだを動かして、ハリーはゆっくりと頭を上げる。
少し眠そうな素振りで何度か頭を振ると、やっと目を覚ました彼は、隣にいるドラコを見つめても別に驚くことはなく、いて当然のように笑いかけてきた。

腕を伸ばして、愛おしげに触れてくる。
ドラコの目元に、ひたいに、ほほに、鼻すじに触れ、そして指先は、形のいい唇を確かめるようにゆっくりとなぞった。

ハリーのその指先は、まるで自分がどこに触れてほしいのか知っているように、何度もドラコを撫でる。
その感覚はひどく気持ちがよかった。

―――そういうふうに、ハリーに触れて欲しかった―――

これは夢だと思う。
自分はひどく寝ぼけているにちがいない。
だから、こんなにもすべてが自分の望んでいることばかりが、奇跡のように起こるんだ。

自分の知っているハリーは、こんな顔で自分に笑いかけてこないことぐらい知っている。
『だけど、もしかしたら、あの屋敷に忍んできた夜の続きなのかもしれない』と、ドラコは思った。
これがあの夜の続きならば、どんなに幸せかと思う。

となりにハリーがいるのが当たり前の、これが日常ならば、どんなに素敵だろうとドラコは願った。
もしそれならば、今度は素直になれるかもしれない。
もう一度最初からやり直せるかもしれない……。

ハリーの腕のなかでゆっくりとドラコは瞳をとじた。
彼の暖かな鼓動が聞こえてきて、ハリーはゆっくりと世界で一番大切なもののように、ドラコを抱きしめた。

ドラコは幸せだった。
自分が生まれてきたことを神に感謝したいほど幸せだった。

―――しかし「奇跡の朝」は煙のように消えうせて、ドラコの期待はすぐに失望に変わった。
ドラコが記憶を取り戻したことを知ったハリーの、あの落ち込みようといったら……
結局ハリーが欲しかったのは、この頭の中にある情報だった。
記憶の戻ったドラコなど、必要としていなかった。



ドラコはいつも部屋の窓辺に座って、外の景色ばかりを眺めている。
冷たい風が落ち葉を吹き飛ばし、どんよりとした重たい雲が垂れ込めている、寒々しい景気がそこにはあった。

ドラコは小さく苦笑した。
ばかばかしくて、笑いたくなる。

それでもハリーのことが諦めきれない、夢ばかりみている自分がおかしくて惨めで、ただただ涙が溢れたのだった―――


■END■