二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【Secretシリーズ 3 】Mind -回想-

INDEX|3ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 

【Harrys mind】



ハリーはみなし子だった。

マグル界でいつも破れかけた、首周りがだらしく伸びたお下がりの服ばかりを着せられていた。
ろくな食事も与えられず痩せてガリガリの、痩せっぽちの枯れ木のようなからだ。
ゆがんでセロテープで補強されためがねをかけて、いつもおどおどとした態度で、暗く俯いてばかりだ。

意地悪な叔母夫婦にへつらい、従兄弟には意味もなく殴られていたけれど、それがハリーにとっては、当たり前の日常だった。
こんな惨めな自分のことなど、ほかの大人たちは見向きもしなかった。
誰からも相手にもされず、同情も受けず、ただポツリと階段下の物置小屋でひざを抱えて過ごしていた。

ハリーは鼠より劣る自分の生活に、疑問など一度も持ったことがない。
『普通の家庭』なんか知らなかったからだ。
『日常』というものは彼にとって、物心がついたときからいつも惨めで、そういうものが当たり前だと思い込んでいたからだ。

ただ、叔母夫婦の、息子への溢れるような愛情を、遠い世界のように見つめながらぼんやりと思った。
(──ああ、あの愛情の半分でも、……いいやほんのちょっとでも、―――ううん、たった1回だっていいんだ。誰かがあんなやさしい手で、僕の頭をなでてくれたら、僕はなんだってするだろう………)

薄暗い窓すらない部屋で、手を合わせてハリーは祈る。
(ああ神様お願いです。誰か僕の差し出すこの手を握って下さい)

ハリーの小さな細い指が震えていた。
(……そして、神様。――もしかして、こんな僕の差し出す手を握り返して、微笑んでくれる人が、ほんのちょっとでも、僕のことを好きになってくれたら、僕は何でもします。僕が出来ることでしたら、本当に何だってします。ほんのちょっとでいいんです。たくさんなんて、決して望みませんから。―――だから、僕のことを好きになってくれる人が、どうか現れますように……)

青白い血色の悪いほほを涙が伝っていく。
(本当に神様、その人が現れたら、僕は誰よりも大切にします。心から愛します。絶対に悲しませることはしません。どんな困難なことが起こっても、命をかけて守り通します。その人を守るのことが出来るのでしたら、僕は自分のからだなんかいりません。命なんかいりません。自分のすべてを差し出しますから、どうか僕のことを好きだと言ってくれる人とめぐり合わせて下さい)
真摯な心からの言葉だった。

(―――誰か僕のことを好きになって―――)
それは一度だって愛情を持って抱きしめられたことがなかった少年の、唯一の願いだった。