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【Secretシリーズ 3 】Mind -回想-

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ハリーの記憶の中のドラコは、いつも薄青く輝くような冷たい瞳で自分を見返していた。
ツンと形のいい鼻を少し上に向けて、ジロリとハリーを見下したように見つめる。

細身のからだにぴったりとあつらえた上質の生地で作られた制服を着て、プラチナに近いブロンドを軽く後ろに撫で付けていた。
貴族特有の意識的にゆっくりとした、命令しかしたことがないような口調でしゃべり、優雅な仕草で長い上着の裾を翻して歩く。
選ばれた純血の血筋を何よりも誇り、自分の父親を盲目的に崇拝している、尊大な態度の、鼻持ちならない相手がドラコだった。

初めて彼を見たとき、ハリーはいいようのないショックを受けて、打ちひしがれそうになる。
どんな相手にも物怖じすることのない自信に満ちた態度は高慢さ。
輝くような外見のドラコは、本当に上質な尊大として、ハリーの瞳に映ったからだ。
すべてが極上の中で、ぬくぬくと育ってきたのだろう。
最上級なものに囲まれ、満たされた黄金の日々の中で育ってきたドラコには、影の部分が全く無かった。

(僕の今まで育ってきた11年間は、いったい何だったんだ?)
あの薄暗い部屋だけが、自分の唯一の逃げ込める場所だった彼の過去。
『惨めだ』とも思わなかったほど、彼の生活に選択権はなかった。
同じ11年間を生きてきたというのに、ドラコと自分との育ってきた環境の違いに、ハリーは愕然となる。

ハリーはまぶしいものを見るように、目を細めてドラコを見つめる。
あまりにも違いすぎている境遇に、ハリーは嫉妬すら沸かないほどだ。
それほど彼ら二人の境遇は離れすぎていた。

生まれた環境も、生い立ちも、過去も、すべてが違いすぎている。
水と油のように、絶対に交じり合うことはなく、いつも二人は反発ばかりしていた。

―――それなのに、いつも視線は彼を追ってしまう。

ホグワーツの薄暗い廊下で、ざわめく放課後の大広間で、視線をさまよわせた。
ハリーはドラコの居場所を無意識にいつも探し続けていた。

まるで『光』をそこに求めているように彼を探す。

ドラコには帰るべき大きな屋敷があり、すべてが満たされて、彼を大切に思う両親がいた。
逆にハリーは、この魔法界にも、マグルの世界にも、帰るべき家がなく、両親すらいないみなし子だった。
選ばれた血筋の由緒正しき貴族の息子の彼と、マナーすらろくに身につけていない出来損ないの自分。
手入れの行き届いたきっちりとした身なりの彼と、ろくな着方も出来ず、美的センスもない自分。
どうあがいても追いつけるはずもなかったし、普通なら選ばれた特権階級にふんぞり返っているドラコの視線に引っかかることもない、ハリーなど矮小でちっぽけな存在だっただろう。

しかしこの魔法の国ではハリーの生き方は大きく反転して、『英雄』として、選ばれた『奇跡の子ども』として、知れ渡っている有名人だった。
誰もがハリーのことを『特別』のように扱う。

今まで常に頂点に君臨して羨ましがられることはあっても、人から自分が下に見られたことがなかったドラコは、そのハリーの存在自体に、対抗心を持ったとしてもおかしくはなかった。
もしかしたら、それよりも深く、彼を憎んでいたかもしれない。
だからあんなにもドラコは、ハリーだけに過剰に反応した。

氷のような美貌を宿して、ドラコは振り返る。
そこにハリーがいることに気づくと臆することなく、シニカルな笑みをたたえて、ゆっくりと自分へと歩いてきた。

ハリーはそんなドラコをじっと見つめて、胸がいっぱいになる。
早くなる呼吸。
じっとりと手の内に汗が溜まっていく。
胸の鼓動は倍に跳ね上がった。

ドラコのあの薄青い瞳の中に、自分の姿が写っているのを確認するたびに、『緊張』と『歓喜』と『苦痛』で、からだが小刻みに震えた。

ドラコは彼の前に立つと、両手を胸の前で組み、威嚇したポーズでしっかりと相手を見つめる。
そしてドラコはどこか鷹揚なもったいぶった口調で、形のいい唇から毒を吐いていた。
どこをつつけば相手が一番傷つくか見透かしたような鋭い言葉で、ハリーをいたぶる。
心の中にずけずけと土足で踏み込んできて、荒しく、──そして容赦なく蹴りつけた。

―――それは恐ろしいほど残酷だった。
まるで美しい顔をした悪魔のようだ。

ドラコが目の前にいるだけでハリーはうずくような、眩暈を覚えた。
幸福と苦痛が一体となって、心の中に満ちてくる。
何と言われてもいい。
どんなにののしられても、彼のことが好きだった。

多くは望んでいない。
彼が自分に近づき、自分を見つめて、自分のためだけに言葉を発してくれるならば、それでハリーは満足だった。
それ以上望むなんて、最初から無理だった。
親友でも友達でもなく、同じ寮ですらない、何も接点がないふたりは、これ以上の発展などなかった。