ツンデレ姫とヤキモチ王子
「アーサー、どうしたんだい? 君が俺に相談なんて珍しいじゃないか」
「そうですよ、いつもはこっちの心配ばっかりしてくれるのに。不安になっちゃうじゃないですか。だから僕も来たんですよ?」
「………………」
言いたいことはあった。それこそ、いくらでも。
「どうしたんだい、何も言わなきゃヒーローの俺にも解決はできないんだぞ!」
けれど、言葉が出てこなかった。
「……あの、アーサーさん? 何か、あったんですか?」
訊いたら何かが起こるんじゃないか、とでも思っているかのように、恐る恐る尋ねてくるマシュー。
「…………俺、」
口を少し動かしたが、声は出てこなかった。
「……アーサー。俺もマシューも怒ったりしないんだぞ」
「そうですよ! 今まで僕たちがたくさん迷惑かけてきたんですから!」
二人の勢いに押されたように、俺は口を開いた。
「俺……フランシスのことが好き……なんだ」
返答は沈黙だった。固まってしまった二人と、顔を上げられずにずっとうつむいている俺。
その沈黙を破ってくれたのは、この店の店員だった。
「コーヒー二つと紅茶一つ……です」
居心地悪そうに注文しておいた食後の飲み物を置き、この場からさっさと退散していった。
「……そ、それは、冗談とかじゃないんだろう?」
コーヒーを自分の元に持って来つつアルが尋ねる。動揺を押し隠そうとしているのか、コーヒーを一口飲んで深く息を吐いた。
「……本気だよ」
大人げないないと思いながらもすねた口調になってしまった。自分の紅茶に多量の――周りからは「多くない?」と眉をひそめられることも少なくない――砂糖を入れる。
「……ま、まぁまぁ」
何て言ったらいいのか分からないという表情で、自分のコーヒーに持参していたメープルシロップを入れるマシュー。
「いつから好きだったんだい?」
「……ちゃんと覚えてない。少なくともお前らと会うよりも前だよ」
「……そんなに昔から……」
絶句気味のマシューは、少し迷う素振りを見せてから俺に質問を投げかけた。
「――だったら何で、今まで言わなかったんですか? えっと、今のタイミングに何か意味はあるんですか?」
「別に深い意味はねぇけど。ただ、誰かに話さなきゃやってらんなくなっちまったんだよ」
それだけだ、と俺はつぶやいた。好きすぎて、とは口が裂けても言えないが。
「よし、じゃあ行くんだぞ!」
自分のコーヒーを飲み干して、アルが大声を出す。
「い……行くってどこに!?」
俺が慌てて問いかけると、アルは決まってるじゃないか、と唇を突き出す。
「フランシスの所に! こういうことは本人に気持ちを伝えないといけないんだぞ?」
と俺の腕を引っ張った。
「や、やめろよバカっ! 腕引っ張んな!」
信じられないような怪力に引きずられ、なすすべもなく(アルに暴力をふるうわけにもいかないし)、世界会議の会場へ戻ってくると、フランシスはギルベルトとエントランスで話していた。
作品名:ツンデレ姫とヤキモチ王子 作家名:風歌