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世界で一番遠い I love you(英米/R15)

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「別れるって言っても、二度と会えなくなるわけじゃない。元に戻るだけだ」

解いた指に自身の指をそっと絡めてイギリスは囁いた。

「俺のこと好きでもないのに、付き合わせて悪かったな」

「あ・・・・・・」

言葉を失ったアメリカはイギリスに何も言い返せない。
違う、それはキミの誤解だ。俺はキミのことを愛している。
そう言うべきなのだ。
何を言うんだい。まったくキミは本当にネガティブだなあと笑い飛ばすべきなのだ。
実際に言おうと声帯を震わせた。
しかし言葉は音にならず、ただ喉を震わせるだけ。
思い浮かんだ言葉のただ一つでさえ音にすることができない。

「わかんねえと思ったのか?」

少しだけ傷ついたようにイギリスは微笑む。

「ばぁか。知ってたよ」

ぽん、とアメリカの頭を叩いた。
そのままぐりぐりと撫でられて頭を上げられないアメリカに断罪を告げる
なのに優しい声が降り注ぐ。

「大英帝国様、舐めんな」

「違うんだ!俺は―――――」

悲鳴のような声だった。
だけど、告げなくてはいけなかった。
今、告げなければ彼を失う。
けれど、そのアメリカの言葉を押し留めたのは他ならぬイギリスの言葉だった。

「いいんだよ。いいんだ。・・・・・・俺は、幸せだった」

本当に、幸せだったんだ。
噛みしめるように言って微笑むイギリスにアメリカはもう何も言えなくなった。

「いきなり押し掛けて悪かったな。―――――メシは作ってあるからきちんと食べろよ」

ギシッ
ベッドが軋んで、触れていた指が離れる。
イギリスが離れていくことはわかったが、視線を上げることすらできない。
最後だと言わんばかりに頭をぐしゃっとかき混ぜてからイギリスは部屋を出て行った。
バタン、と扉が外界と遮断する音を立てて閉まり、ようやくアメリカはノロノロと
顔を上げた。

(今、彼を追いかければ間に合う)

すぐに家を出ていくのだとしても、多少の荷物があるのだからまだイギリスは
家に居るだろう。
だから追いかけて告げるべきなのだ。
ごめんね。別れるなんて言わないでおくれよ、キミのことを愛しているんだ、と。
そう言えばきっとイギリスは許してくれる。
ふざけんな、ばかぁって言われるかもしれないけれど最後には許してくれるだろう。
早く追いかけようと唇を噛んで立ち上がろうとベッドに手をついて―――――ぼた、と
大きな雫がシーツに落下して染みを作った。

「あれ・・・・・・?」

心底驚いて目に触れて、指先を見る。
暗闇の中でもわかるほどはっきりと指先は濡れていた。
何故?と原因を突き止めるまでも無く、理由を理解する。
ぼたぼたと溢れ、零れ落ちる涙。
一度理解してしまえば後は流れ落ちるままにするだけだ。

「っ、あ、うっ、ぁぁ・・・」

目だけではない。鼻の奥も喉も全てが熱い。
あまりにも息が苦しくて、うまく嗚咽を零すこともできない。
ただ涙だけが栓を捻った蛇口の水のように零れ落ちてシーツを濡らしていく。

「い、ぎ、りす・・・っ」

ずっとわからないふりをしていただけで―――――好きだったのだ。イギリスが。
弱点を握るなんて嘘だった。
否、嘘ではない。
確かにイギリスと付き合い始めた当初はそう考えていた。
けれど、付き合っていくうちにどんどん気持ちはイギリスに惹かれていった。
恋人としてのイギリスはとても優しかった。
普段の意地悪な面をどこかに忘れてきたかのように甘く優しく笑った。
そのたびにアメリカはハイティーンの少女のようにドキドキしてしまって
それを隠すためにツンとした態度を何回も取った。
イギリスは仕方ないなと苦笑して、アメリカを受け止めてくれた。
それでも、彼を好きになってはならない、自分は彼の弱点を掴むために
恋人になったのだと言い聞かせてきた。
気付きたくなかった。だけど、気づいてしまった。
ロシアの言葉に動揺したのだって、その言葉が真実であることに怯えたからだ。
いつもそうだ。
終わってから気づく。

(今更気付いたって遅いのに!!)

涙は止まらない。
生まれたての赤ん坊のように大きな声を上げて、アメリカはいつまでも泣いた。