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世界で一番遠い I love you(英米/R15)

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世界で一番遠い I love you act3


(―――――頭が痛い)

いつの間にか眠ってしまったのだろう。
カーテンの隙間から光が漏れていた。
泣きすぎてずきずきと痛む額を押さえてアメリカは身を起こす。
変な姿勢で眠っていたせいか身体がぎしぎしと軋んだ。
時刻を知ろうとサイドテーブルに置いてある携帯に手を伸ばすと共に着信を知らせる
メロディが鳴り響いて思わずびくりと震える。
もしかして、と微かな期待を滲ませてディスプレイを覗きこんで
少しだけ―――――いや、かなりがっかりしながらも通話ボタンを押して出る。
かけてきたのは日本だった。

「ハロー日本。どうしたんだい?」

「お久しぶりです。アメリカさん。酷い声ですが大丈夫ですか?」

「うん、平気だよ。それよりも用件はなんだい?」

「あ、すみません。あの、今日はお仕事の関係でアメリカさんにお会いする約束を
 していたと思うのですが」

「約束―――――」

がんがんと痛む額を押さえたまま記憶を探る。
昨日はロシアと会談で今日は―――――

「ゴメン、確かに今日だったね」

「はい。お約束の時間になってもアメリカさんがいらっしゃらないので
 電話をかけさせていただいたのですが・・・・・・」

「ホントにごめん。俺、今起きたばかりなんだ」

怒られることは覚悟でアメリカは素直に謝罪を告げた。
アメリカは空気が読めない(読まない)上にだらしが無いと思われている。
だが、仕事に関しては無断での遅刻欠席は余程の緊急事態以外はほぼ無いと
言ってもいいほどで、だからこそ日本は心配をして秘書を通さずに
直接アメリカに電話をかけてきたのだろう。
そんな日本の心遣いに申し訳なくて、唇を噛んだ。

「―――――アメリカさん」

電話越しに伝わる日本の低く冷たい声。
めったにないけれど、本気で日本が怒ったときにだけ出す声だ。
名前を呼ばれただけで背筋が伸びて、涙が滲んだ。
昨日の夜、あんなに泣いたのにまだ涙は出るらしい。
口を開くと泣きだしてしまいそうでこれ以上話すことができない。
二人の間に横たわる沈黙が辛かった。

「困ります。こんなことされますと」

「ごめ・・・っ」

ああ、本当に怒っているんだ。
日本の本気の怒りを感じ取ってしまうともう駄目だった。
昨日の晩の続きのようにぼたぼたと勢いよく涙が零れ落ちていく。

(最悪だ)

怒られて泣くなんて―――――しかもビジネスの電話でだ。
大人のすることじゃない。
「国」として、超大国として失格だ。
だからイギリスにも見捨てられたのだろうか。
違う。イギリスに見捨てられたのはアメリカが嘘をついていたからだ。
イギリスはきちんとアメリカのことを愛していてくれたのにアメリカがその愛を
逆手にとって、弱点を探ろうと偽りの愛を告げたからだ。
だからイギリスは別れようと言った。
それにイギリスは嘘をつく悪い子は嫌いだと言っていた。
ずっと昔、まだイギリスの庇護下にいた頃、アメリカは嘘をついたら駄目だぞと
教育されていた。
嘘をつく子は悪い子だ。だからアメリカ、嘘はいけないぞ。
そう彼は言っていた。
その言いつけを破ったのはアメリカだ。
アメリカは悪い子になってしまった。
しかも、仕事をサボってしまうような悪い子に。

「アメリカさん・・・?」

訝しげな日本の声がアメリカを呼ぶ。
必死にばれないようにしているのだがアメリカが泣いていることが
ばれてしまっているのだろう。
駄目だ。早く泣き止まないと。
わかっていても駄目だった。
昨夜から絶え間なく続いている悲しみがアメリカの背を押す。
押されるたびに涙がぼろぼろと落下していく。

(目が溶けちゃいそうなんだぞ)

いつだったか、イギリスがお酒を飲んでボロボロに泣いたときに目が溶けて
しまいそうだと思った事があったが、まさか自分がそうなるとは思わなかった。
そもそも泣いたのが何十年かぶりのような気がする。
一生分の涙を今流しているんじゃないかというくらい涙は流れていった。

「・・・・・・一度、電話を切りますね。落ち着いたら連絡を下さい」

今日はアメリカさんとの会談しか予定はありませんので。
そう言い残して日本との通話は切られた。
通話を切られた後、アメリカはしばし呆然とした。
日本はあまりにもアメリカが情けないので、怒りを通して呆れてしまったのだろう。
そして今のアメリカとはビジネスをするに値しないと判断して通話を切った。
それは至極当然の判断なのに、裏切られたようなそんな感情をアメリカは抱いた。

(馬鹿だ俺。日本が怒るのは当たり前なのに)

ずずっと鼻を啜って膝を抱え込んだ。
落ち着いたら連絡をくれと日本は言っていたけれどどんな顔をして
連絡をしたらいいのかわからなかった。
ごめんなさい、だけでは足りないような気がする。
日本の、なんだっけ、土下座・・・だったか、あれをしないといけないんじゃない
だろうか。
日本の時代劇でサムライがどうしても許されないようなことをしたとき
地面に座り込んでしていたのをDVDで見たことがある。

(どうやってするんだっけ?)

記憶を探って思いだそうとしてもなかなか思いだせない。
そのうち唸るほど掘り返したが、どうにも思いだせない。

「・・・グーグルに聞いた方が早いんだぞ」

最初からそうすればよかったと呟いて、アメリカはベッドから降りた。
妙に重い体を引きずって脱ぎ散らかした靴を履く。
よたよたと部屋の入口に歩み寄って昨夜から閉めっぱなしだった扉を開けると
微かに漂う焦げくさい香りが鼻をついた。

「イギリス・・・」

じわりとまた涙が滲みそうになって慌てて手の甲で拭う。
泣いてばかりでは駄目だ。
泣いてもイギリスは戻ってこない。
すん、と鼻を鳴らして会談を降りようとした時、自室に置いてきた携帯が
けたたましい音を鳴らした。