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世界で一番遠い I love you(英米/R15)

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「アメリカと付き合い始めた」

幸せそうに微笑んだイギリスが日本にアメリカと付き合い始めたことを告白したのは
今から一か月前のことだった。
イギリスとはそれなりに長い付き合いになるのだが、あんなに幸せそうに微笑んだ
イギリスを見るのは初めてのことだったと思う。
縁側に座って手に持った湯呑を見つめている姿からは幸せが満ち溢れていて
日本まで暖かな気持ちがこみ上げてくる。

「おめでとうございます。イギリスさんが幸せそうで私も嬉しいですよ」

「ありがとな、日本」

皿に嬉しそうに笑ったイギリスがお、お前もおめでとうと言ってくれるのか。
ありがとな。と誰もいない空間に向かって話しかけている姿を視界に入れないようにして
お茶を口に運んだ。
ああ今日も美味しく入っていますね。貰い物ですが、これは個人的にも
購入をしたいものです。
などと現実逃避している間に終わったのだろう。
すまねえな日本と笑いかけられて「いえ、大丈夫ですから」と答えた。

「あいつが飽きるか、他に好きな奴ができるまでの間だが、出来る限り
 長く続けばいいと思っている」

「何を・・・・・・」

訝しげな声にイギリスは口端を持ち上げた。
口端を持ち上げたその表情はあまり日本には向けられない顔だ。
どちらかというとフランスやロシアの方が多く見ているだろう。
そんな表情を乗せたイギリスが何を考えているのか本当にわからない。
それにイギリスのあの言いようではまるでアメリカが面白半分で
付き合っているかのようではないか。

「あいつは・・・アメリカはそういう意味で俺のことを好きじゃない」

「・・・・・・」

「ずっと見てきたからわかる。あいつは俺のことを好きではないんだ」

はっきりと言いきってイギリスは息を吐いた。
そこには苦悩や懊悩はない。
純然たる事実だけが示されている。
はてさてどういったことでしょうか。
ずきずきと頭が痛むような気がして額に手を当てた。
具合でも悪いのか?と尋ねる声にいいえ違います。気にしないで下さいと告げて
しばし思考の渦に漂う。
日本の見る限り、イギリスはここ近年にないくらい幸せそうだ。
これは間違いない。
ずっと好きだった(いつから恋心になったかは知らないが)人と結ばれたのだ。
幸せでないわけがない。
だがイギリスはアメリカは自分のことを好きなわけではないと言った。
好きではないのだけれど、付き合っていると言うのだ。
それがどういう意味合いなのか。
イギリスさん、と落ち着いた声で呼びかけるとああ、と頷いて続きを話しだした。

「さっきも言ったが、アメリカは俺のことを好きではない。恋愛的な意味でも
 それ以外の意味でもだ。けどあいつは俺の告白を受け取った。
 あのメタボが何を考えているかなんてわかんねえよ。それでも俺はあいつが
 許す限りは手を離せない」

「それで・・・それでよろしいのですか?」

たまらず問いかけるとイギリスはぱちぱちと目を瞬かせた。
全く予想していなかったと言わんばかりの仕草だ。
探るように日本を見返してイギリスは口をもごもごと動かす。
いや、なと歯切れ悪く呟いて答えを返した。
 
「俺の行動をあいつに否定されないんだ。抱きしめても遊びに誘っても断られない。
 好きだと言うと顔真っ赤にするんだぜ。こんな幸せを俺からは手放せねえよ」

「幸せ・・・・・・」

「アメリカが傍に居る。俺が傍に居ることを許してくれている。理由はどうであれ
 俺のことを受け入れてくれている。なら、俺はあいつに騙されたり
 裏切られたとしても構わないんだ」

さすがに国益に関することは許せないけどな。
淡く笑ってイギリスは付け足す。

「不思議だな日本。あいつにもう一度裏切られる。いや、今進行形で
 裏切られている。それなのに、幸せで堪らないんだ」

眼差しを日本の上、遙か遠くへと向ける。
その眼差しの先にあるのは空ではなく、イギリスの一番大切なものなのだろう。
雲一つ窺えない澄みきった青空はまさに彼を模すのに相応しい。

「いつか別れが来るとしても俺はきっと受け入れられる。今度こそ、笑って
 俺の元から離れていくアメリカを認めることができるんだ」

空を見つめたまま、イギリスは笑みすら浮かべて言いきった。
言葉にも眼差しにも悲しみの色は無い。
だからこそ余計に胸を突かれた。
恋人に裏切られていると知っていて悲しくないはずがない。
その恋人がアメリカならば尚更だ。
日本はアメリカとイギリスの兄弟だった頃のことも恋人としての彼らも知らない。
けれど、元兄弟、現在は友好国として少しずつ距離を詰めていった彼らのことならば
少しだけ知っている。
アメリカがイギリスのことを馬鹿にしたりからかったりしながらも、誕生日に
イギリスから貰ったプレゼントを大切にしていることや逆にイギリスが皮肉を
言いながらもアメリカの我儘を許してしまうこと。
二人が言葉にしなくても互いを大切にしていたことを知っているからこそ
日本はイギリスが悲しくないわけがないと思うのだ。

「すまないな。こんなつまらない話を聞かせて。・・・・・・忘れてしまって構わない。
 いや、忘れてくれ」

空から日本に視線を戻したイギリスは苦笑のような表情を浮かべて言った。
言葉尻は頼むような響きを持たせていたが、空気を読める日本は言葉に込められた
真意を読み取って微かに眉を寄せる。
だがすぐに曖昧な笑みを浮かべ、こくりと頷いた。

「イギリスさんがそうおっしゃるなら」

「助かる」

短く謝意を告げてイギリスは微笑む。
笑っているのに泣きだしそうに見える笑みは日本の心に深く刻み込まれ。
忘れてくれという友の言葉を守ることはできなかった。