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世界で一番遠い I love you(英米/R15)

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あつあつの湯気の立ったスープを喉に流し込みながらアメリカは真正面に座って
新聞を読みながらトーストを齧っている人を眺める。
アメリカにはゲームをするな、テレビに夢中になるなと口煩いくせに
自分自身のことに関しては構わないらしい。
澄ました顔で見ているのはどうせページスリーガールに違いない。
会議室にエロ本を持ち込んで平然と読んでいるくらいなのだから大して羞恥心もない。

(それにしてもよく恋人の前でピンナップを読めるよね)

しかも告白してきたのはあちらなのにと分厚いベーコンをナイフで切りながら
アメリカは心の中でぼやく。
嫉妬をしているわけではないが一般的に交際をしている恋人の前で悪びれも無く
堂々と見ていい物ではないだろう。
熱心に新聞を読んでいたイギリスはようやくアメリカの視線に気付いたのか
「どうした?」と尋ねてきた。
「別に嫉妬とかじゃないんだけど」と心の中で前置きをしてアメリカは口を開く。

「キミ、ホントにそういうの好きだよね」

「あぁ?紳士の嗜みだろうが」

「だとしたら俺は紳士じゃなくていいよ」

「お前はそれ以前の問題だろうが」

「キミに言われたくないよ」

皮肉気なアメリカの台詞にぴくりと眉を動かしたイギリスは凄味の効いた
視線をアメリカに向けた。
さすがに罵声は飛ばしてこないが視線はそれ以上にイギリスの苛立った感情を
如実に伝える。
昔からアメリカにだけは表情を取り繕うのが下手な人だったから
彼が澄ました表情をしていてもすぐにわかる。
特に怒りを隠している時は。
よくよく観察すると握りしめた新聞紙に微かな皺が寄っている。
本当に取り繕うのが下手な人だなあとくすりとアメリカは笑いを零した。

「テメエ何笑ってやがる!!」

「やだなあ。紳士たる人が朝から大声出さないでくれよ」

「誰のせいだ!!」

空気がびりびりと震えるほどの大声で怒鳴り、ついにイギリスはがたりと
音を立てて席を立った。
アメリカだから怒鳴られているだけで済んでいて、フランスが相手だったら
もう既に手が出ているだろう。
席を立ったものの殴るまでには至らないらしく肩で息をしながら
じっとアメリカを睨みつける。
そうしてふーふーと全身の毛を逆立てて怒っている姿はやはり猫だ。
イギリスと丁々発止のやり取りを続けている間にもフォークを動かし続けたアメリカは
息を一つついてその手を止めた。

「キミが怒っているのはわかったから座りなよ。せっかく奇跡的にも食べられるものが
 できたんだから、きちんと食べないと食べなんだぞ」

「誰のせいだ・・・っ」

ギギギ、と謎の呻き声を上げてそれでもイギリスは憤懣やるかたない様子ではあったが
ドスンと音を立てて席に座りこんだ。
余程不機嫌なのか、先ほどまで熱心に見ていた新聞紙には目にもくれずに
黙々とベーコンを口に運ぶ。
その様子を見てアメリカも食事を再開した。
イギリスを思う存分からかったおかげか、もやもやした気持ちは晴れて
すっきりとした気分だ。
その後は特に会話をせずに黙々と食べたせいか二人はほぼ同時に食べ終わり
少しは機嫌の回復してきたイギリスと一緒にシンクに食器を片づける。
イギリスの家はまだ食器洗い機が無く、自分で食器を洗わなければいけない。
何度かアメリカの家の素晴らしい食器洗い機を紹介したのだが、繊細な食器が多いからと
素気無く断られてしまっていた。

(すごい便利なんだけどな)

いれるだけで食器をピカピカにしてくれる食器洗浄機は素晴らしい発明だと思う。
そんな素晴らしい発明品を使わないということはアメリカには理解できないことで
でもイギリスらしいとは思う。
最近は携帯やパソコン等は最新の物を使うようになったけれど、基本的に懐古主義の
アンティーク大好き英国人で、必要なもの以外はなるべくアンティークで
揃えるようにしている。
今アメリカが洗っているカップもミントンのアンティークの逸品で少しでも傷を付けたら
元ヤンの洗礼を受ける羽目になる逸品だ。
そんな大事なものをどうしてアメリカが洗っているのかというと、そのティーカップは
アメリカが使っている物だからだ。
恋人になった時、一番最初にイギリスから紅茶を出されたときに
使われていたのがこのカップだった。

「今日からお前のティーカップはこれだ」

どことなく照れくさそうにそっぽを向いて言うイギリスにそのときはいつもより
高そうだなとしか思わなかったのだが、後にオークションで売ったならば
とんでもない値段がつくほどのアンティークのティーカップだと知って
一度は別のものにして欲しいと訴えたことがある。
しかしイギリスは恋人になったのだからとアメリカには理解できない理由を並べ
その勢いに押されて未だにこのティーカップを使い続けている。
洗ったカップを棚に収めるとイギリスも洗い終えたらしく、アメリカの横に立つ。
仕舞ってあげるよと言うとおう、と答えてイギリスがアメリカに食器を手渡した。

(そういえば、こういうふうに俺のことを頼ってくれるようになったのも
付き合い始めてからだよなあ)

以前はそもそも手伝おうともしなかったし、よしんば手伝うと告げてもお前に食器を
割られたら困ると拒否されるであろうことは容易に想像できる。
けれど今はこうして申し出ればイギリスは嫌な顔一つ見せずにアメリカを頼ってくれる。
素直に頼られると悪い気がしなくて、ついついアメリカも手伝いを申し出てしまう。