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Coffee Break

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──というか、こんな相手と関わりなど持ちたくなくて、その場からそっと離れようとした。
二三歩下がったところで、急に立ち上がった相手に、むんずと肩を掴まれた。

「見捨てるなよ、マルフォイ。俺たち、同じホグワーツの同窓生だろ。もちろん、助けてくれるよな?」
「なんで、僕が!そんな義理も義務も、僕には一切ないぞ」

「僕はヴォルデモートから世界を救った!感謝しろよ!」
「魔法界全体とか、そんな大きすぎる出来事なんかに、恩など感じるものか。知るかっ!」

「だったら、禁じられた森で君を助けたし!」
「古すぎ!いったい、いつの話だ」

「だったら、とっておきのことを言うぞ。――僕は炎の中から君を助けた!」
途端に、ドラコはグッと言葉に詰まった。
確かにそれを言われたら、反論などできない。
あの時、ハリーに助けられなければ、確かに自分たちは燃え盛る炎に巻き込まれて、焼け死んでいたにちがいなかったからだ。

ドラコは悔しそうに唇を噛みながら、むっつりとした不機嫌な顔で手を差し出した。
「その書類の束を見せてみろよ。とりあえず」
「えっ?――ああ、はい」
突然大人しくなり、自分の意見に耳を貸し出したドラコに戸惑いながらも、ハリーはいそいそと、書類を差し出す。

パラパラとページをめくるたびに、ドラコの眉間のシワが深くなっていった。
「本当に、全く出来ていないじゃないか。全部書きかけのままだぞ。これなんか、表題だけであとは白紙だなんて……」
あまりの仕上がりの悪さに頭を振る。

「僕はまだここに入って、少ししか経っていないから、報告書の手伝いなんか、絶対に無理だ」
「そんなことないよ!ただ、出来事を順序立てて書いていけばいいだけなんだ。まるっきり簡単だよ!」
渡りに船だとばかりに、ハリーはその簡単さをアピールする。

「だったら、すぐに自分ひとりで出来るはずだろ?」
「でも出来ないんだ、僕としては!」
「――なんでだ?」
「物事を順番に書いていくと、途中で話がこんがらがってくるんだ。順番が前後して、書き直したり、内容を付箋につけて追加したり、間違った部分を消したり、消さなかったりして、行ったり来たりしていたら、話がゴチャゴチャになって、分からなくなって、難しくなってきて、最後はどうでもいいやで、放り出して、結局最後は机の上にポイなんだ」

ドラコは相手のお気楽さに、眩暈と変頭痛がしてきそうだ。
フリント先輩の気苦労が、手に取るように分かる。
こめかみを押さえて、ドラコはうつむき、肩を落とした。

「つまり……、つまりだな。順序立ててやれば、君は報告書が書けるんだな」
「ああ、そうだ!」
きっぱりとハリーは宣言をする。

はぁー……とため息をつくと、ドラコは目の前の椅子を引いて座った。
「君も突っ立っていないで、さっさと座れ。そして、この一枚目の事件の詳細を喋ってみろ。要点を僕が書き出していくから――」
杖を振って自分のカバンを呼び寄せると、ドラコは中から筆記用具を取り出し始める。

ハリーは手堅い援軍を得たとばかりに嬉しそうに笑うと、嬉々としてドラコの前の椅子に座り込んだ。
「まずは、最初の事件は一年前で、部署に配属されたばかりの頃に……」
「一年前!それじゃ、本当にこの一年間も何もしていなかったのか?」
「ああ、……う、うん。そうなんだ」
肩をすくめて頷き、頭を掻く。

「そんな仕草をしてもかわいくはないぞ」
むっつりとした顔で、ドラコは毒づく。
「早く話の続きをはじめてくれ。朝の始業時間まで、時間がない」
「えっ?ああ、分かった。まず、この事件は――」
ハリーは宙を見ながら、覚えていることをポツリポツリ喋り出すと、ドラコは頷きつつ、ペンを走らせ始めた。


作品名:Coffee Break 作家名:sabure