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Over the Rainbow -虹の彼方へ-

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ふたりが付き合いだしたきっかけは、ホグワーツに在籍していた、学生の頃の話だ。

中庭で偶然鉢合わせたとき、いつもの口論から次第にエスカレートして、つかみ合いの喧嘩になってしまった。
そのとき弾みで、ドラコが相手を殴ったのだ。
本当は威嚇の意味で殴るフリをするつもりが、そのタイミングがズレて、運悪く相手のほほにヒットした。

「グッ……」と息を飲み、口を押さえたハリーの指の間から、血がボタボタと落ちてくる。
口の端を切ったらしい。
そこから、鮮血が滲み出していた。

ドラコは自分が仕出かしたことに驚き、固まる。
ハリーは相手の驚いた顔を見て、自分の傷の深さを知ったのだろう。
真っ青な顔で震えているドラコに、口元を押さえたまま「ハンカチを持ってる?」と尋ねた。
震える指でそれをポケットから差し出すと、ハリーは布を切れたところに当てる。

ショックで、今にも倒れそうなドラコを見て、ハリーは「大丈夫だから」と答えた。
「こんなのはかすり傷だよ。もっとひどい怪我は何度もしているんだし、君が気に病むことじゃないから」と、逆に相手を労わるように、声をかけてくる。
何度も「気にしなくていいから」と告げた。


──ただ、それだけだった。


傷を負わせたことをキッカケに、ドラコはハリーに「大丈夫か?」と、顔を合わせると、声をかけるようになった。
そのたびにハリーは頷き、「平気だよ」と答えてくれた。
自分を気遣うドラコに、ハリーは嫌な顔をしなかった。
ほほ笑んで、頷いてくれる。

ドラコはそれが嬉しかった。

―――嬉しくて、なんだか泣けてきそうなほど、嬉しかった。


作品名:Over the Rainbow -虹の彼方へ- 作家名:sabure