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愛されてますよ、さくまさん

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いつもと同じでいつもと違う(アザさく)



アザゼルは人間界にいた。
しかし、魔界にいるときと似たような姿である。
本来の姿とまったく同じではないのは、まわりに人間が多くいるので、悪魔だと騒がれないようにするためだ。
下半身は獣ではなく人間と同じ、頭に角もない。
「うっはー! やっぱり、こっちのほうが気持ちええなあ!」
アザゼルは大きく伸びをした。
人間と同じような服装だったりするが、いつもよりは解放感がある。
「アザゼルさん」
隣で佐隈が少し低い声で言う。
「仕事を忘れてませんか」
仕事。
人間界にいるにもかかわらず、アザゼルが魔界にいるときと近い姿でいるのは、仕事のためである。
今いるのはデパートだ。
事務所の備品を買いに来たのである。
今回は買い物の量が多いため、アザゼルは荷物持ちの仕事をさせられるのだ。
小さな身体では荷物持ちとして、たいして役に立たない。
だから、芥辺はアザゼルにかかった結界の力を解いたのだった。
その芥辺は仕事で遠方に出かけている。
ベルゼブブの力が必要になるらしく、つれていった。
「ああ、仕事な」
うんうん、とアザゼルはうなずく。
しかし。
「せっかくなんやから、そんなんは後じゃー!」
そう告げ、走り出す。
「楽しんでくるわー!」
今の自分は小さくない。歩幅が違う。筋力だって違う。走れば早いのだ、佐隈よりもずっと。
アザゼルは佐隈を置いてきぼりにして、人間界を楽しむことにした。

ナンパに成功し、アザゼルは女の子とデパートを歩いていた。
結構ええ感じやん。
このまま行ったら……。
先のことを想像して、アザゼルは鼻の下を伸ばした。
だが。
頭にふっと佐隈の顔が浮かんだ。
アカン、アカン。
すぐにアザゼルは佐隈の顔を頭から追い出した。
思い出したらアカン。
だいたい、さくは、いっつもワシの扱いが悪いんや。
あんなん、置いてきぼりにしたって、かまへん。
「あっちゃん」
ナンパの相手がアザゼルの腕をぐいっと引っ張った。
「早く行こ?」
デパートの外へとうながしている。
アザゼルは我に返った。
「ああ、せやな」
そう返事しながら、女の子に笑いかけた。