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愛されてますよ、さくまさん

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佐隈は男三人に囲まれていた。
あまりタチのよろしくなさそうな男たちである。
佐隈は地味な印象はあるが、素材は良いほうで、普段はほとんどモテないものの、妙なタイプを惹きつけてしまったりもするのだ。
「いいかげんにしてください」
「そんな堅いこと言わないでよー」
「そうそう、俺たちと遊ぼうよー」
「楽しいよー」
男たちは佐隈の抗議を聞き流し、いっそう距離を詰める。
まわりの者たちは関わり合いになりたくないようで、素知らぬ顔をして通りすぎていく。
「メガネ、似合ってる」
「うんうん、ちょっとお堅い感じがするのがいいんだよね」
「そそられちゃうな」
男たちの手が佐隈の身体に触れた。
佐隈の表情が強張る。
おびえが、顔に出た。
「なにしとるんや、ワレ」
低く、怒りを含んだ声で、アザゼルは言った。
そして、男たちを押しのけて、佐隈のそばに行く。
佐隈と眼が合った。
メガネの向こうにあるのは、いつもと違って、少し弱々しい眼差し。
「なんだ、おまえ!」
男たちのうちのひとりが、イラだったような声で聞いてきた。
すると。
アザゼルが返事するよりも早く。
佐隈がアザゼルの腕をつかんで、自分のほうに引き寄せた。
「私の夫です!」
そう顔を真っ赤にして、言った。
なんで夫やねん。
そこは彼氏でええやろ。
思わず、アザゼルは胸のうちでツッコミを入れた。
よっぽどテンパっているのだろう。
混乱しているのだ、しかたがない。
それに。
なんか。
ちょっと。
嬉しいしな?
「ああ、そーや」
アザゼルはニヤリと笑った。
いつもとは違って、魔界にいるときに近い顔だ。
犬面ではなく、彫りが深くてツリ目の顔である。
「ワシの嫁じゃ」
それに身体は大きくて、胸板は厚く、筋肉質だ。
男たちは表情を硬くした。
アザゼルの迫力に押され始めているのだ。
「ワシの嫁にふさげたマネするつもりやったら、それなりの覚悟せなあかんで」
眼光鋭く男たちをにらみつける。
男たちは射られたように、後ずさった。
アザゼルはたたみかける。
「さっさと、どっか行けや」
猛犬が敵に対してうなるように告げた。
直後、男たちは踵を返し、去っていった。