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隣で佐隈がひと息ついた。
肩が少しさがっている。力が抜けたらしい。
それをアザゼルは見て取った。
結局。
アザゼルはナンパした女の子とこのデパートを出ようとして、しかし、出なかったのだ。
そのときに女の子とは別れた。
佐隈のことが気になったのだ。
これから良い展開がありそうな女の子と、佐隈を比べて、佐隈を選んだ。
そして、佐隈を探していたら、佐隈が男三人に囲まれているところに出くわしたのだ。
「……すまんかったな」
アザゼルは謝る。
「置いてきぼりにして、すまんかった」
自分がいれば、佐隈はあの男三人に絡まれることはなかっただろう。
佐隈が恐い思いをせずに済んだはずだ。
申し訳なく思う。
それと同時に、あのとき女の子と別れて佐隈を探して良かった、と思った
「そうですよ、アザゼルさん」
佐隈は言う。
「仕事、ちゃんとしてくださいね！」
少し元気を取りもどしたように見える。
だから、アザゼルはほっとした。
「じゃあ、行きましょう」
佐隈は歩きだした。
アザゼルも歩きだす。
すぐに佐隈の横に並ぶ。
そして。
「さく」
呼びかけて、手を佐隈のほうに差しだした。
いつもとは違う、本来の姿に近い大きな手のひら。
それを見て、佐隈は眼を見張った。
けれども。
なにも言わずに、佐隈はアザゼルの手を取った。
手をつないで歩いている。
顔を真っ赤にしながら。