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Holiday

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ハリーは珍しそうに、部屋全体を見回して、暖炉の上のマントルピースに乗っている写真立てに視線を向けた。
おもむろに立ち上がり、近づいてみると、暖炉の上にはたくさんの写真が飾られているのが分かった。

誕生日祝いに撮影したのか、正装しパリッとした格好で写っている大きめの家族のポートレートを筆頭に、バカンスでのビーチの写真や、白い上質なリネンに包まれて、ベビーベッドですやすやと眠っている写真。
果ては、いつの間にファミリーで訪れたのか、雪山をバックにマグル界で、スキーをしている写真まであった。

どの写真もみんな、息子がメインだ。
中央で笑っている子供が、どれほどこの夫妻に愛されているかがよく分かる写真ばかりだった。
そのフォトフレームの中に自分の息子が、いっしょに写っているものが数枚あることに、ハリーは気付いた。

「えっ!これって、アルだよね?」
ドラコは差し出された写真をのぞきこんで、当たり前のように頷いた。
「君の息子とわたしの子供は同寮だし、学年もいっしょで、いつも行動を共にしているから、写真にいっしょに写っていることは、別に珍しいことではないはずだが?」

ハリーはブンブンと首を振った。
「いや、とても珍しいって!!だいたい僕のまわりはみんなグリフィンドールばかりだから、それにばっかり手がかかって、スリザリンの写真はほとんどないんだ。だいたい、アルは大人しい子だったし、手がかからなくて、だからいつも後回しにされていて――」
またドシンという派手な音が響いて、アルバスの笑い転げる声が何度も響いてくる。

「――大人しい子だって?」
ドラコが指を天井に向けると、ハリーはせわしなく、寝癖のような髪の毛に指を突っ込み掻いた。
「いや、家では大人しいんだけど、ここでは別人みたいだね」
言い訳がましく呟いて、少し顔を赤らめる。

ドラコは機嫌よく目を細めて手を振った。
「別に君を責めているわけじゃない。わたしの息子は結構、我が強いから、落ち着きがある、我慢強いタイプと馬が合うのだろう。アルバスは最初会ったときから、小さいのにちゃんとわたしの目を見て、堂々と挨拶をしてくれたよ。よく躾けられたマナーのいい子供だと思ったのに。……まさか意気揚々と息子に紹介された親友が、ポッター家の子供だとは思わなかったけどな」
「そのまさかは、そのまんま君に返すよ!」

「まさか天敵の君の子供だなんて……」
「絶対に一生ソリが合わないと思っていた相手の子供が、息子の親友だなんて……」
「無鉄砲で無茶なポッター家の子供なんて……」
「傲慢で偉そうななマルフォイ家の息子なんて……」
「悪夢か、悪い冗談かと思った」
「それはこっちのセリフだ」

ふたりは激しく同意して、一瞬黙り、そして声を出して笑い合った。

「いや、本当にわたしは、君の息子が気に入っているんだ。幼いのに、出しゃばったところもなくて、落ち着いていて、どこか思慮深いところもある。残念ながら、君にはないものばかりだな、ポッター」
「息子のことを褒めてくれるのは嬉しいけど、それとの引き合いに、僕を出すのは止めてくれ」
「しかも見た目は君にそっくりだ。緑の瞳も、強くウエーブしている癖毛も、むかしのハリー・ポッターと瓜二つだ。しかも、なかなか気の利いたことを言ってくれるし……」
ドラコはニヤニヤとした、物を含んだような笑みを浮かべる。

「それはいったい何だ?」
相手の人を食ったような表情に釣られて、畳み込むようにハリーは尋ねた。
ドラコは間を持たせるように、ゆっくりとカップを取り上げ、紅茶をすする。
「――マルフォイ?」
じりじりとした相手の声が、逆に心地よい。
カチャリとそれをソーサーに戻すと、まだ何かを含んでいる瞳でじっとハリーを見た。

「――それで、君は自分の息子から、なんと呼ばれているんだ、ポッター?」
「はぁ?普通にパパと呼ばれているけど。それがどうしたんだ、マルフォイだって同じだろ?」
当然だろ、という顔で、ハリーは答えた。

ドラコはうつむき、フフフと低い笑い声を上げる。
「そうだ。わたしもスコーピウスからパパと呼ばれている。そして、アルは――――」
そこでまた一旦、ドラコは言葉を切った。

「そして、どうなんだ?ああ、続きはいったい何だよ。早く、もったいぶらずに教えろよ!」
焦れてハリーは不満そうな声を上げる。


「――そして、アルバスはわたしのことを『ダディ』って呼んでいる」


「なっ、なんだって!!」
前につんのめり、危うくテーブルのポットを倒しそうになった。
「まさか!!!」
ハリーは叫んだ。
「ど、どっ……、どどど、どうして、マルフォイ。どうして、そんなことを呼ぶようになったんだ?」

ドラコは面白そうに、落ち着きを全く失った相手の動きを観察する。
「どうしてって聞かれても、なんだか知らないうちに、そう呼ばれていたんだ」
「なんで?!!」
「そんなこと、わたしが知るか。子供の一種の戯れか冗談だろ」
「そんなことがあったなんて、知らなかった……」
ハリーは目玉を白黒させている。

そして、ふいに思いついたように、ガバッと顔を上げて叫んだ。
「自分はそんなことを、子供に指示していないからな!君のことを『ダティ』って呼べなんて」
強く大声で宣言をする。
その声がことさら大きくて、ドラコは痛そうに耳を押さえた。
「そんなこと分かっているから。大声を出すな」
ドラコは手を振った。

ハリーは頭を抱えて唸り声をもらした。
「……いったいどうして」
「多分アレだろう。わたしはたまにホグワーツを訪問するとき、息子にちょっとしたプレゼントを渡していたんだ。珍しい本だったり、お菓子だったり、その時々でちがうけれど、そのたびに同じものを、君の息子にも渡していた。スコーピウスは兄弟か、無二の双子のように、アルバスのことを大切にしていたから、わたしもわけ隔てなく同様に、息子と同じ態度で付き合っていたら、いつの間にか、そう呼ぶようになったんだ」

「呼ぶようになっていたって……。それって、君が品物で僕の息子を手懐けたってこと?」
ドラコはムッとした顔で不機嫌そうに眉を寄せた。
「手懐けるって、まるでペットか小動物のように軽々しく言うな。だから君は配慮にかけるんだ、ポッター。──君は知っているのか?4月にあった親を交えての懇親会のとき、大勢のスリザリン生の中でただひとり、ぽつりとアルパスが立っていたことを。グリフィンドールには、君たち親子の知り合いが多くて、そこから動けなかったみたいだが、たったひとり残されたアルバスの気持ちを、考えたことがあるのか?……君の息子は涙ぐんでいたぞ。スコーピウスはそんな肩を落とした親友を心配して、一生懸命に元気付けていた。身を寄せ合って頷いている、ふたりの姿は傍から見ても、とてもいじらしいかった。わたしも妻も、ふたりの傍にいて、息子と同じようにアルバスに接した。それとが、悪いというのか?手懐けただと?ひどい言い草だな。だいたい獅子寮に、自分の子供や知人が多いからと、その輪から外れたただひとりの、スリザリン生のアルバスを、蔑ろにしていいというのは、まったく言い訳にもならない」

鋭く突かれて、ハリーは一瞬グッと言葉に詰まった。
作品名:Holiday 作家名:sabure