【かいねこ】春告鳥ノ恋
「いろは」
庭を掃いていたいろはに、染井が声を掛ける。
「はい、旦那様」
「明日、吉野が此処に来るよ」
「そうなんですか!それでは、ご馳走を用意しないと」
「いや、カイトを迎えに来るだけで、すぐ出立するそうだ」
「え・・・・・・」
染井の言葉に、いろはは箒の柄を握りしめ、
「カイトさんも、一緒に行かれるのですか?」
「ああ。カイトの荷物は、まだ此処に置いて欲しいそうだよ」
「そうですか。カイトさんは、また帰ってきて下さるのですね」
「ああ。何時になるかは知らないけど」
染井は庭に降り、いろはを抱き寄せた。
「それでも、あんたは待つんだろう?」
「・・・・・・はい」
小さく頷いたいろはの髪を、染井は優しく撫でる。
「それじゃあ、カイトにそう言ってきなさい。そうしたら、あの子も安心できるからね」
「はい、旦那様」
いろはは、手の甲で顔をこすると、ぱたぱたとカイトの部屋へ走っていった。
作品名:【かいねこ】春告鳥ノ恋 作家名:シャオ