【かいねこ】春告鳥ノ恋
短い沈黙の後、染井は先ほどの手紙に手を伸ばした。
「吉野が、手紙を寄越してきたんだよ」
「先生は、お元気でしょうか?」
「ああ、元気そうだよ。相変わらず、堅苦しい調子でねえ」
染井は、便せんを取り出して、
「今度、帰国するそうだよ」
「えっ!そうなんですか。いつ頃でしょう?」
「明日の昼頃ここに来て、また出立するようだよ」
「それはまた、急なことですね」
「ああ」
染井の様子に、カイトは、ふと気がかりな表情を浮かべる。
「何か、問題が起こったのでしょうか?」
「いいや、何も。ただ、あんたも連れて行くつもりだそうだ」
「え・・・・・・」
染井は、淡々とした調子で、
「荷物は、此処に置いていって構わないからね。身の回りの物だけ、まとめておきなさい」
「あ・・・・・・はい」
「全く、急な話だよ。さ、部屋に戻って、支度しておいで」
「はい」
カイトはのろのろと立ち上がると、躊躇いがちに口を開いた。
「あの、いろはさんには」
「あたしから話しておくよ」
「はい。分かりました」
カイトが出ていくと、染井はふうと息を吐いた。
作品名:【かいねこ】春告鳥ノ恋 作家名:シャオ