【かいねこ】春告鳥ノ恋
廊下の軋む音に、カイトが顔を上げると、顔はトカゲ、体は着流し姿の人間の男という異形が、ふらりと入ってくる。
座り直して手をついたカイトに、異形はにたりと笑って、カイトの前に座った。
「そう畏まることはないよ。今日から、あたしらは家族さ。時にあんた、その髪はどうしたね?」
カイトは手を上げて、自身の黒髪に触れる。
「はい。吉野先生が、元の色では目立ちすぎると言って」
「はっは、あれも細かい男だね。あたしは、あんたの青い髪は綺麗だと思うよ」
思いがけない言葉に、カイトは決まり悪げに身じろぎしてから、
「先生のお宅にも、唐繰人形がいるのですね」
「よしておくれ、堅苦しい。あたしのことは、『染井さん』で十分さね。いろはのことは、何も聞いてなかったのかい?」
「あ、はい。特には」
「おやおや、一緒に暮らすというのに、あれもしょうがないねえ。あの子は、あたしの世話をしてくれるのさ。おいで、あんたにも紹介しておこう」
立ち上がり、部屋を出ていく染井の後に、カイトは慌ててついていった。
作品名:【かいねこ】春告鳥ノ恋 作家名:シャオ