【かいねこ】春告鳥ノ恋
「どうだい?仲良くやれそうかい?」
晩酌の席で染井に聞かれ、いろはは嬉しそうに頷く。
「はいっ。カイトさんに、書き方を教えて頂けることになりました」
「ああ、そうかい。それは良かったねえ」
いろはは、染井の杯に酌をしながら、
「カイトさんは、荷物を解いています。沢山の本を持ってこられて、何だか、外国の言葉が書いてありました」
「医学書じゃあないかい?吉野は、色々教え込みたいようだからねえ」
「そうなのですか。あんな難しい言葉が分かるなんて、カイトさんは、とても頭が良いのですね」
「そうさねえ。あんたも、色々教えてもらうといいよ。世の中のことが、分かってくるから」
「はい。でも、あまりご迷惑を掛けては」
「まあ、そうさねえ。それなら、いっそ夫婦になればいいじゃないか」
「は・・・・・・はい?」
聞き返したいろはに、染井はにたりと笑って、
「なかなかいい子じゃあないか、カイトは。あたしも、喜んであんたを嫁に出せるよ」
「えっ?なっ!だ、旦那様!!」
真っ赤になったいろはに、染井はからからと笑う。
「ほら、あたしのことはいいから、カイトの手伝いにいっておあげ。あんたも、若い男を相手にした方が、楽しいだろう」
「なっ、あっ、だ、旦那様の馬鹿!!もう知りません!!」
ぱたぱたと走っていくいろはを見送って、染井は上機嫌で杯を空けた。
作品名:【かいねこ】春告鳥ノ恋 作家名:シャオ