【かいねこ】春告鳥ノ恋
「旦那様、お手紙が来ています」
「そうかい。ありがとう。そこに置いておくれ」
書き物をしていた染井は手を休め、いろはの置いていった手紙を手に取る。
「おや、吉野からじゃないかい」
封を切り、がさがさと便せんを開いて、中に目を通した後、染井は思案顔で手紙を膝に置いた。
「さて、どうしたものかねえ」
しばし思案してから、染井は立ち上がり、庭で洗濯物を干していたいろはに、声を掛ける。
「いろは、カイトを呼んできておくれ」
「はい、旦那様」
ほどなくして、カイトがやってきた。
「お呼びでしょうか?」
「ああ、すまないね。そこに座っておくれ」
カイトが、染井と向かい合って座ると、染井はふっと笑って、
「何だか、あんたがうちに来た日のことを思い出すねえ」
「はい」
「結局、あんたの髪の色を戻してやらなかったね」
カイトの手が、自然と自身の髪に伸びる。
染井は目を細めて、
「その髪色も、良く似合っているよ」
「えっ、あ、はあ。でも」
「ん?」
カイトは目を伏せて、
「僕は、いろはさんの髪の色も、綺麗だと思います」
「そうかい。あれは、ヒトと唐繰りを区別する為のものだからねえ」
作品名:【かいねこ】春告鳥ノ恋 作家名:シャオ