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こらぼでほすと 闖入1

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 いつも、あちらで友達のことも話しているので、元保護者たちは、悟空の友達にも会ってみたいと漏らしていた。そういうことなら、年少組に来てもらおうと思いついた。
「悟空、たぶん、みなさん、店で三蔵に接待されたがると思いますから、その時にでも紹介してさしあげれば、どうですか? それで気に入ったら、どちらも再度、逢おうと勝手にしてくれますよ。」
「うん、そうだよな。じゃあ、最初は、そっちで。ああ、ママ。なんか言われたり苛められたら、俺が怒るからさ、心配しなくてもいいぜ。」
「そうだな。おまえ、しっかり、天蓬を見張れ、サル。あれが一番危ない。」
「オッケー。」
 寺の女房にはわからないが、やはり、いろいろと、ここいらは繋がっているらしい。
「どうせなら、紅にも逢わせよう。珍しいから喜ぶはずだ。」
「それも店でやってください。寺でまで騒がれたら、厄介ですからね、悟空。」
 元敵の紅も顔合わせはしているが、久しぶりだ。悟空にすれば、敵というよりは好敵手という相手で、そういう意味で、元保護者は会いたがったのだ。
「ニール、来るのは三人です。三蔵の直属の上司の金蝉さん、それから護衛役ということで、天蓬さんと捲廉さん。まあ、金蝉さんと捲廉さんは、良識のある人物ですから、問題はありません、天蓬さんは、茶目っ気の強い方なので、多少からかうと思いますが、それだけです。ちなみに、天蓬さんと捲廉さんはオシドリ夫夫なので、部屋は、このふたりでひとつにしてさしあげてくださいね。」
 客間に布団を三組並べても構わないが、金蝉が嫌がるだろう、と、付け足して八戒はにっこり笑う。
「ここでやったら撃ち殺すから安心しろ。」
 と、坊主が女房に声をかけているが、逆効果というものだ。
「おーい、三蔵、それは、ちとまずかねぇーか? 直属じゃねぇーけど、おまえの上司だぞ。」
「かまわねぇーだろ、それぐらい。」
「まあ、あのふたりなら、簡単に避けてくれるでしょうから狙ってもいいでしょうけどねぇ。一応、武人なんだから。」
 さらっと八戒が酷いことを言っているが、ニール以外は笑っている。三蔵の腕で仕留められるかどうかは微妙だからだ。
「おい。」
「ああ、はい。」
 亭主が、「おい。」 と、言えば、女房は晩酌の用意なんてものをする。出勤前の腹ごしらえの時間であるらしい。もちろん、悟空には、おやつが準備されているし、沙・猪家夫夫の前にも軽いものが運ばれてくる。
「一緒に出るなら、おまえも摘め。」
 ほれ、と、亭主が板ワサを箸で摘んで女房の前に運んでいるし、はいはい、と、女房のほうも口を開けているわけで、これが、ただの同居人だと言い張れるなら言い張ってみろ、と、言いたくなる光景だ。
 漢方薬治療から、ほぼ一ヶ月が経過して、すっかり、寺の女房の体調も良くなった。疲れて熱を出すことはなくなったし、体調も安定している。途中、台風が通過した時は、さすがに寝込んでいたが、回復も早かった。どうやら、持ち直したらしい、と、一同、安堵している。



 店に出て、アスランとキラに、闖入者の来訪は知らせておくことにした。全員が知っているわけではないが、まあ、メインスタッフは、対人間チームが人外だということは知っている。
「三蔵さんの上司? それって・・八戒さん、神仙界の? 」
「ええ、それが来ます。目的は、三蔵の嫁を拝みに来るんですが、まあ、ここでも遊びたいと言うだろうし、キラくんたちの顔も見たいと思いますんで、面倒だから、ここで紹介を。」
 いちいち、紹介するのは面倒なので、『吉祥富貴』で顔繋ぎをしておくことにした。ここなら、大概、スタッフが揃っているから一度で済むからだ。
「ごくーの知り合いの神様でしょ? うわぁー楽しみだなあ。」
「キラくん、神仙界のことは内緒ですよ? 」
「わかってるよ、八戒さん。うちのママ、知らないもんね。」
 ニールは人外の存在なんてものは知らない。イザークとディアッカ、シン、レイあたりのバイト組も知らない。別に公開しなきゃならないことでもないから、そこいらはスルーの方向だ。
「今のところ、予約がないのが・・・・月曜と火曜ですね。」
 パラパラと予約帳を覗いて、アスランも確認した。さすがに、一般のお客様がいらっしゃる日は避けたい。本日が金曜日。来訪が、月曜日だから、ちょうど火曜ならいいだろう。
「じゃあ、火曜日を押さえておいてください。」
「わかりました。バイト組も呼びますか? 」
「シンとレイの都合次第でお願いします。」
「悟空の知り合いなら来ると思いますよ。珍しい来訪者ですから。」
 悟空の知り合いというなら、みな、歓迎したいと言うだろう。事情を知っているのも知らないのも、そういう知り合いの来訪は珍しいことだからだ。

 そして、カウンターでは開店準備の手伝いをしつつ、ニールがトダカに酒の手配を頼んでいる。
「へぇー三蔵さんの上司が? 」
「はい、それで、酒だけはいいのを用意しておけって。こんな短期間で、どうにかなりますか? トダカさん。」
 土日を挟んで月曜にはやってくる。それまでに、いい酒なんて用意できるのか、ニールにはわからない。
「ははは・・・お安い御用だよ、娘さん。間に合わないなら、私の所蔵しているのを出してあげるさ。」
 店にも、ストックがあるし、注文すれば月曜には間に合う。アルコール関係の仕入れを担当しているトダカには造作もないことだ。
「ありがとうございます。」
「仕事か何かなのかい? 」
 仕事で特区に出向いてくるのだろうか、と、トダカは思った。じじいーずは、三蔵以外の対人間チームが人間ではないことは知っているし、本山の三蔵の上司なんてものが、おそらく人間じゃないという予測も建っている。玄奘三蔵という位が、その宗教界の最高位であるというのは知っていたからだ。その上は、人間ではいないということになる。そんな上司がやってくるからには、それなりの理由があるのだろうと思ったのだが、ニールの説明に、あんぐりと口を開けた。
「三蔵さんの女房を拝みに来るって・・・うちの娘さんのことかい? 」
「・・はあ・・・・悟空が、あっちで言っちゃったらしくて・・・三蔵さんも、そのまま肯定してきちゃったらしいんですよ。」
「お茶目な理由だ。」
「いや、ふざけてると思うんですが? 」
 そりゃ、日頃の寺の夫婦の様子を拝んだら、確実に納得してくれるだろう。トダカだって、納得している。いっそのこと、籍も入れてしまえばいいだろう、と、勧めたいくらいだからだ。それぐらいしっくりした夫婦だ。
「いいんじゃないか、そういうことなら、のんびりしてもらえばいい。あんまり気を遣いすぎて疲れたりしないようにね? 娘さん。」
「ああ、はい。三蔵さんからも、いつも通りでいいと言われてます。」
「じゃあ、私も挨拶に行こうかな。娘さんの父として。」
「ああ、いいかもしれませんね。俺の親代わりってことで挨拶してください。俺、素性が・・・あはははは。」
「そこいらは別に詮索しないんじゃないかな。三蔵さんも、いろいろとやってる人だからさ。」
作品名:こらぼでほすと 闖入1 作家名:篠義