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こらぼでほすと 闖入2

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「まあ、それならやるけどさ。」
 靴がないから、家のほうへハイネが走る。着替えるつもりはない。どうせ転がったりするのだから、このまんまでよかろうというところだ。戻ってきて、半纏を脱ぐと、境内へ降りてくる。
「うおー寒っっ。」
「とりあえず温めるか? 」
「そうだな。適当な蹴りでもくれ。」
 屈伸したり背筋を伸ばしたりしながら、ハイネも準備をする。元々が、宇宙空間に適合できるようにコーディネートされている身体だが、地上でもナチュラルよりは動ける。筋肉や体力は強化されている。それに、ハイネは、フェイスという特務機関に所属していたエリート様だ。キラほどではないにしろ、身体能力は高い。軽い蹴りを繰り出されて、ほいほいと避けて後退する。見切れるぐらいのスピードで動いてくれているから、ハイネもついていける。
「やっぱり、ナチュラルな人間よりは軽いな。」
「まあなあ。」
 じゃあ、徐々にスピードアップするぞ、と、捲簾が攻撃を連続してくる。なんとか防御はしているものの、ハイネには攻撃に転じる暇はない。適当にやって、お茶を濁すつもりだったのだが、とてもではないが、そんな余裕はなかった。




「バカだなあ。捲簾と、本気でやったら死ぬってーんだよ。」
 午後前に現れた悟浄は、どっぺりと居間で転がっているハイネに呆れる。三十分と保たなかったのが、屈辱だ、と、のたまったら、その意見だ。攻撃は手加減されていたのだが、スピードについていけなくなった。軽くとはいえ、急所に打撃を受け続けたら、動けなくなってダウンさせられた。
「天蓬じゃなくてよかったな。こいつ、えげつない攻撃しやがる。」
「失礼な。僕は正攻法で攻めますよ。えげつないのは三蔵でしょう。」
で、その前に激しく運動していたはずの三蔵は、涼しい顔で新聞を読んでいる。あれぐらいは、食後の運動というのは本当らしい。ニールは洗濯を干して、裏庭の菜園の水遣りをしている。いつも通り、寺の夫夫は日課をこなしている。
「三蔵も鈍ってるとこをみると、おまえもボロボロなんじゃないか? 悟浄。」
「日々精進してるあんたらと一緒にしないでくれ。俺らは、必要な時にしか動かねぇーし、ここいらで本気だしたら、死人の山になんだろ。」
「まあ、特区にいりゃ、それで済むだろうけどなあ。」
 もちろん、捲簾たちだって、すでに実戦はない状態だが、それでも武人である限り、日々の鍛錬はやっているし、部下たちの訓練もやっているから鈍らないというところだ。
「適当に観光でもしてみますか? 」
「それは、明日以降にしましょう。今日は、のんびりして夜は、三蔵に接待してもらう予定ですからね。・・・金蝉、僕たちは、やはりホテルを取りますが、あなたは、どうします? 」
 折角の休暇なので、上司様ご一行のうちの夫夫は、夫夫の時間も必要だな、と、結論してホテルも取ることにした。ここでは、さすがに声も動きも筒抜けで、やる気が削がれるからだ。とりあえず、ホテルを確保して、寺に泊まったりホテルに滞在したり適度に自由時間を楽しむつもりだ。
「俺は、ここでいい。おまえらは、適当に二人でいちゃつけ。」
 確かに、寺にはプライベートというものはないが、金蝉は、これといって隠し事もないし、三蔵の女房が世話好きだと判明しているから、不自由もないので、そのまま滞在することにした。
「三蔵、なんなら実技の勉強しますか? 僕らでよければ、ご覧にいれますよ。なんなら、悟浄たちも呼んで、二組の夫夫のやり方を観察というのでも?」
「天蓬さん、僕ら露出趣味は生憎とありませんので、辞退します。」
「八戒、僕も露出狂じゃありませんが、ここは、ひとつ、先達として技術の披露をしてさしあげようかと思っただけです。」
「・・・あんまり、三蔵を苛めると、悟空が怒りますよ? 」
「そうなんですよねー。悟空は、三蔵の味方ばっかりして、僕らの味方はしてくれないんです。」
 すっかり過去のことは忘れられていて、今の保護者の三蔵の味方ばかりする、と、天蓬は嘆くのだが、それは違うだろうと、悟浄がツッコミだ。
「日頃の行いだろ? 」
「悟浄、午後から僕の相手もしてください。正攻法で真面目にやってさしあげます。」
「壊さないでくださいね。これ、僕の所有物なんで。」
「あはははは、もちろんですよ、八戒。軽く昏倒ぐらいでやめておきます。」
「いい加減、キジも鳴かずば撃たれまいぐらいのことは覚えたら、どうだ? 悟浄。」
「無理だろうな、こいつ、素直すぎる。」
 金蝉と捲簾にツッコミ返されて、悟浄のほうは、やってらんねぇーと不貞腐れて居間に転がる。


 午後からも、捲簾の稽古に付き合って、だらだらと過ごして、夕方に悟空が戻って来た。ハイネが潰れているのは、スルーで、卓袱台に座り込む。まだ、店の開店時間まで時間があるから、軽くおやつを食べる方向だ。
「今日は、昼寝できなかったんじゃないの? 」
「いいや、ちゃんと横になったよ。」
「ほんとか? 三蔵。」
「寝かせたが、短かった。」
「今日、待ってなくていいからさ。先に寝ててよ? ママ。」
「はいはい。」
 昨日の残り物と、スパゲッティミートソースなんてものが運ばれてきて、サルは、それを食べている。沙・猪家夫夫と、捲簾天蓬夫夫は、先に出かけた。ホテルのほうに荷物を移動させておく用事があったからだ。こちらの運転手に、ハイネが残っているが、ハイネは、送迎だけして戻って来るつもりだ。ニールも出勤してもいいのだが、ちょっと息抜きさせたほうがいいだろう、と、休ませることにした。来客があれば、何かと動き回っているので、留守のうちに、ゆっくりさせておこうとスタッフで決めた。まだ十日は滞在するのだ、のんびりさせないと、具合が悪くなる。
「おまえもホストはやってるのか? 」
「一年に何度かです。後は、裏方のほうの手伝いを、繁忙期だけさせてもらっています。」
「帰るまでに、一度、三蔵と接待してくれ。」
「俺ですか? あんまり上手くないですよ? 金蝉さん。」
 ご指名があれば、ホストもやっているが、滅多に店に現れないレアホストということで売り出されているので、ニールは、接客のほうは、あまりやっていない。それでも、徐々にスキルは上がっていると、指名してくれている客は誉めてくれるが、当人には解らない。
「こいつ単品とは、また違ったもんが見られるんだろ? 」
「俺、三蔵さんと組んで接客はしてないなあ。」
 同じ席に着くのは、一年に一度だ。それも、ウーロン茶係と、お客様の相手役と分かれているので、三蔵が普段、どういう接客をしているのかも知らない。
「三蔵は、人気なんだぜ? 金蝉。トップスリーのひとりだしさ。」
「こいつがか? 悟空。」
「流行のツンデレってやつなんだってさ。」
 ぶぶっと、悟空の言葉に、ニールは噴出す。確かに、ツンデレ属性というのは、そうかもしれない。亭主は、ギロッと女房を睨んでいるが、そんなことでいちいちビビるようでは、女房なんてやってられない。
「ツンツンだろ? デレるのは、ママニャンの前だけだ。」
作品名:こらぼでほすと 闖入2 作家名:篠義