Telephone
ドラコはハリーと出会うまで、ここまで自分のことを思って、必要としてくれる相手に出会ったことがなかった。
自分の地位や目的の上ならば、寄り添おうという相手なら何人もいたけれど、純粋にドラコ自身を必要だと言ってくれる相手はハリーだけだ。
それが例え闇の陣営にいた自分だったとしても、ハリーは気にしなかった。
『僕が今まで、どこにいたのか知っているだろ?いつかは裏切り、君の寝首をかくかもしれないぞ』
脅すように、確かめるように言うと、ハリーはただ目を細めて笑った。
『上等だよ、ドラコ!それぐらい、最初からとっくに覚悟しているさ。そうでなきゃ、なんで君に『好きだ』と告白したと、思っているんだよ』
吹いてくる海風に髪をなびかせて、さも当然そうにハリーが言い切るのを、ドラコは水平線が眩しいふりをして視線を下に落とす。
『──裏切るかもしれない相手を信じるなんて、本当に君は救いようがないほど、バカだ。どうしようがないほど、英雄気取りのグリフィンドールだな』
口元が震えてくるのを必死で押し止めて、嫌味を言った。
相手の本心が、どこまでなのか、分からなかった。
──もしくは、『やはり信じられない』と言われて、傷付くのが怖かったからかもしれない。
途中で裏切られて捨てられるよりは、最初から近づかなければいいと、ドラコは思った。
それほど、ドラコは相手を求めていた──
ハリーは相手の肩に手をかけて、ドラコの泣きそうな瞳で震えている顔を覗き込み、やさしく囁いた。
『同じだよ。君だって、素直じゃない。本当は好きなのに、そんな顔をして、僕から離れようとしている。──どうしようないほど、君だって、スリザリンだ』