あなたに幸あれと私は願う
ふと、アザゼルがため息をついた。うつむいていて、ベルゼブブのほうを見ていない。
ベルゼブブはアザゼルを眺めつつ問う。
「私の頼みを引き受けてくれますか?」
自分にはないアザゼルの特殊な力で、芥辺と佐隈の結びつきを強固なものにしてもらいたい。
「……考えとくわ」
少し間があって、アザゼルはベルゼブブを見ないまま答えた。
さらにそのコウモリに似た羽を大きく広げた。
「じゃあ、またな」
「ええ」
アザゼルは飛びたった。
家のあるほうへと帰って行く。
それをベルゼブブは見送る。
さっき、アザゼルは断らなかった。
頼みを引き受けてくれるのかもしれない。
そうなれば、佐隈は。
ベルゼブブは想像した。
だが、すぐにその想像を頭から消し去った。
背中の羽根を動かす。
なにも考えないようにして、自分の城へと飛んだ。
作品名:あなたに幸あれと私は願う 作家名:hujio