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あなたに幸あれと私は願う

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ベルゼブブはペンギンのような手の先を拳に握る。
奥歯を強く噛みあわせた。
本当は想像したくもないことだ。
できれば自分の知らぬ間に終わらせてほしかった。
しかし、それではダメであるらしい。
逃げることはゆるされないらしい。
「……わかりました」
ベルゼブブはアザゼルのほうを向いた。
精一杯、平静をよそおいつつ、アザゼルの視線を受け止め、見返す。
お互い無言でいる。
少しして、アザゼルが眼を伏せた。
アザゼルはベルゼブブに背を向ける。
それから、部屋のドアのノブに手をかけた。
部屋から出ていくのかとベルゼブブは思ったが、アザゼルはドアをほんの少し開けただけでノブから手を離す。
アザゼルはベルゼブブを振り返らずに、言う。
「ホンマは近くでやりたいんやけど、アクタベに気づかれたら、どんなめに合わされるかわからん」
これから行う術の話だろう。
「せやから、ここでやる」
ベルゼブブは反対しない。
アザゼルが芥辺に気づかれるのを避けようとするのは、わかる。
自分も芥辺の恐ろしさを充分に知っている。
それに、ここからでもできるとアザゼルは判断したのだろうから。
「でも、ちょっと離れてるし、相手はあのアクタベや。時間がかかるで」
「それは、そうでしょうね」
待ち時間は長くないほうがいいと思う。
アザゼルの術が完成するまでのあいだ、その先にあることを想像してしまうに違いない。
苦痛の時間となるだろう。
さっさと魔界に帰ってしまいたい。
だが、仕方がない。
願い事をかなえるためには、なんらかの代償が必要となる。
そんなことぐらい、悪魔の自分はよくわかっている。
「そしたら、始めるで」
「はい」
アザゼルは黙りこんだ。
集中している様子である。
もちろん、その特殊な力を発動させるためだろう。
ベルゼブブはアザゼルの緊張している背中を眺める。
ついに始まったのだ。
作品名:あなたに幸あれと私は願う 作家名:hujio