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あなたに幸あれと私は願う

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「……べーやん」
しばらく黙りこんでいたアザゼルが言う。
「わかった。べーやんの気持ちは、よお、わかった」
その身体が動く。
だから、その肩に置いていた自分の手をベルゼブブはおろした。
アザゼルは身体ごと振り返り、ベルゼブブを見る。
「せやけど、その気持ち、ワシにだけゆーて、自分の中にしまっとく気ィとちゃうやろな」
「アザゼル君」
「話さなアカン相手、他におるやろうが」
だれのことを言っているのか、ベルゼブブは察した。
「ですが」
「べーやん」
ベルゼブブが反論しようとするのを、アザゼルはさえぎった。
その右手があげられる。
「ちゃんと伝えんな、あかんで」
あげられた右手は拳に握られ、親指だけが立てられている状態だ。
アザゼルの親指がその背後をさした。
指さされた先には部屋のドアがある。
ドアは少しだけ開けられている。
まさか。
そう思い、ベルゼブブは眼を見張った。
もしかして、そこにいるのか。
さっきから今まで、ずっと、そこにいたのか。
アザゼルは右手をおろし、歩きだす。
「……当たってくだけてしもたときには、骨ぐらい拾ったる。ヤケ酒に、つきおうたるわ」
隣を通りすぎつつ、アザゼルはベルゼブブのほうを向かずに告げる。
「べーやんはワシの友達やからな」
少し照れくさそうな、しかし、優しい声だった。
アザゼルは足早に遠ざかっていき、やがて、魔法陣に足を踏み入れた。
その身体が魔法陣の中に吸い込まれて消えてゆく。
魔界へと帰って行ったのだ。
残されたベルゼブブは身体の向きを変えた。
ふたたび、部屋のドアを見た。
覚悟を決める。
ベルゼブブはドアを開けた。
そこには。
予想していたとおりの光景があった。
佐隈が廊下に立っている。
作品名:あなたに幸あれと私は願う 作家名:hujio