運命の人
武がからりとした笑みで俺の頭をくしゃりと撫ぜてくる。俺の仕事が急に立て込んだから手伝う、と10代目に断って、奴はしばらく前から俺の部屋で寝泊りしていた。できる仕事だけでも、人望篤い恋人が請け負ってくれるのは掛け値なしにありがたい。
寝込みを襲われると覚悟していたら、今のところは単なる同衾で済んでいるのは繁忙期だからに過ぎないのだろう。それなりの仲ではあるんだし。
「俺だって相手が六道じゃなくてもっといい奴だったらとは思うが、気づいてたか?10代目が超直感でとはいえ、そいつが現れるってことまで予感してたのは」
敵味方含めて奴一人だ、と俺は武に告げた。
「奴が来るときは例外なく、あいつが来る、って。単にそれだけ危険な奴なんだと思ってたんだが、より強い白蘭やXANXUSには、リアクションがなかった。なんでだろうってずっと不思議だった。お前の話聞いて、今日ようやく納得したぜ」
奴がいつか特別になることを、どっかで10代目は知ってたんだろう。
「止めたところで止まらない。行動だけ見てれば六道の気持ちは一貫してる。10代目がマフィアでなくなることを一番望んでる奴が傍にいれば、きっとあの方は安心していられるから」
そっか、と武は男っぽい笑い方をした。
「お前には俺がいるから、寂しがることないのな。隼人」
----------いい加減こっち向け。獄寺。
そう言って押し倒してきたときと同じ顔をしている。長い付き合いだ、俺の弱点を読みきっているらしい。
おう、と軽く応えて奴の肩を掴み、離した。