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こらぼでほすと 闖入4

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 ごはんはタイマーで炊かれているので、そのごはんをお粥にするのだというので、そちらは捲簾がやってやろうと手を出した。普段、酒の肴やらは自作しているので、簡単なものは捲簾もできるし、そろそろ、いつもの味が食べたくなってきたところだった。
 そうこうしていたら、金蝉と天蓬も起き出して来る。今日は、悟空の学校についていこうと思っていたのだが、そういうことなら、と、捲簾と天蓬が残ることになった。坊主に、女房の世話は期待してはいけない。それは、長年の付き合いで、捲簾たちだって理解している。水を飲ませたりぐらいはするのだろうが、看護なんてできないと思われている。
「たぶん、トダカさんか八戒が来ると思うから、それまで頼める? 」
「いいですよ、これといって用事があるわけじゃありませんから。ニールのことは任せてください。」
「薬って、どこにあるんだ? 悟空。」
「ママの部屋の文机のとこに置いてある。熱があったら、解熱剤も飲ませといてくれ。」
 介護担当者になって久しい悟空は、慣れたものだ。月に一度か二度は、こういうことがあるので、テキパキと準備する。台所のいくつかの鍋には、煮物やら汁物も用意されているから、坊主の昼も、それで賄える。そして、午後からは、里のお父さんことトダカが様子を見に来てくれるのも定番だ。『吉祥富貴』では、天気予報に敏感で、寺の女房がダウンするであろう天候の場合は、誰かが様子を見に来ることになっている。基本のローテーションは、トダカと八戒だが、それに、時間のある年少組とか、看護士の資格のあるハイネあたりがやってくることになっている。いつもなら、ハイネが居るのだが、昨日、ラボのほうへ呼び出しを受けて留守だ。
「とりあえず、おまえと金蝉は、飯を食え。」
 登校する悟空と、それについていく金蝉は、先に食事を始める。三蔵の分も、飯を盛ってやるのが、捲簾の性格の良さを現している行為だ。それに礼を言うこともなく、三蔵も箸をつける。
「あ、やっぱり、僕も白米より、こっちのほうがいい。」
「そういうと思って、多めに作ってるさ。調味料とかが違うから、味は完全にいつも通りとはいかないけどな。しかし、世の中、便利になってるな。中華スープの素なんてものがある。」
 台所で、お粥を製作している捲簾には、天蓬がくっついている。食卓の椅子に座って、亭主の調理を見学中だ。
「そういうの買って帰るのなら、チャイナタウンですね。」
「そこいらは、八戒に案内させればいいだろう。あいつも調達しているはずだ。

 材料も、こちらならインスタントなものは簡単に手に入る。そういうものは、あちらにはないから買って帰ろうかと考えていた。そういう場合は、八戒に尋ねればいい。こちらのチャイナタウンの案内もしてくれるだろう。どういうものがあるのか判明すれば、次回からはメールで依頼すれば送ってもらえる。
「ああっ、うまそーーーっっ。」
 食事を終えた悟空が食器を下げてきた。匂いだけでもおいしそうだ。捲簾の横に寄って、匂いの原因を確認する。くつくつと煮込まれているのは中華粥だ。これは、米が柔らかく潰れるまで煮込むので、少々、時間がかかる。
「それ、まだ? 」
「もうちょいだな。・・・おやつに作っておいてやるよ。他にリクエストあるか? 」
「豚の丸焼きとか猪の丸焼きとか食いてぇー。」
「それ、材料って売ってるのか? 悟空。」
「豚一匹とかでは売ってないな。猪もカタマリしか見たことない。」
「材料がねぇーもんは作れねぇーだろ。ホイコーローとか酢豚ぐらいなら、冷蔵庫の材料でいけそうだったぞ。」
 それもいいなー、と、悟空はごくりと喉を鳴らしている。食欲魔神ぶりは健在だな、と、捲簾もリクエストを受け付けて笑っている。



 なんでこういう時だけ、予報通りに雨が来るかなーと、ニールは、うごうごと布団でうごめいている。起きられないことはないのだが、起きても動きは鈍いので、家事ができるほどではない。朝の支度はしておいたから、悟空が、どうにかしてくれるだろう。まだ、空には青い部分もあるというのに、がんがんと頭痛はするし、身体は重い。少し開けた障子からは、少し寒いぐらいの空気が入ってくる。朝のお勤めを終えた亭主が、様子を見に来て、トイレには運んでくれて、枕元にペットボトルは置いてくれたから、今のところ用事はない。寝て過ごすしかないので、とりあえず寝る。
 そのうち、上司様たちが出かけたら、亭主が顔を出してくれるだろうと思っていたら、とんでもないのに起こされた。肩を揺すられたので、目を開けたら、上司様の一人が微笑んでいたからだ。
「うぇ? 」
「気分は、どうですか? ニール。うちの亭主がお粥を用意したんで召し上がってください。」
「へ? 」
「捲簾、ニールが起きました。・・・はい、起こしますよ? 」
「あ、はい。え? 」
 ゆっくりと起こされて、上司様の一人が鍋を運んでくる。ほれ、と、茶碗によそわれたものは、粥の匂いではない。どっちかというと、雑炊のような感じだ。
「俺が作ったから、うちのほうのお粥なんだが・・・・いけるか? 」
「はあ? 捲簾さんが? 」
 茶碗を受け取りつつ、ニールは、そのいい匂いのする中身を覗く。普段のお粥より、米は潰れているし、野菜が細かく刻まれて入っている。へぇーと感心していると、捲簾が木のスプーンを持たせてくれる。ある意味、至れり尽くせりだ。
「いつも、俺が酒の肴は作ってるんだよ。休みの日なんかだと、こいつのメシも作ってるし、おまえと似たようなことやってんだ。」
「・・・そうなんですか。」
「それ、一膳ぐらいは食えよ。それから薬だ。悟空から手順は聞いてるから。」
 それだけ言うと、文机の上に置かれている薬箱を手にする。そこに、毎日の薬と、発熱用とか消化剤とか、用途が書かれた袋が入っているので、毎日用から薬を取り出している。
「でも、厄介ですね。雨の度に、これじゃあ。」
 身体を支えてくれている天蓬も、この様子には少し驚いた。気圧変化がまずい、と、初日に悟浄は言っていたが、確かに、雨が降る前に動けなくなるのでは、移動は難しいだろう。
「こればかりは、どうにもならないらしいです。・・・あ、美味い。捲簾さん、これレシピってありますか? 」
「レシピってほどじゃないけどな。」
 結構、濃い目の味がついていて、ほぼ雑炊だが、微妙に味付けが違う。悟空が食べていたものなら、レシピを貰いたい。もしかしたら、そういうものがいくつかあるのかもしれないな、と、ニールは、その中華粥を食べつつ考えた。
「他にもあるなら・・・教えてくれませんか? 悟空の好きなものがあるなら、それも。」
「あいつの好物で、こっちで作れるもんなら、八戒が作ってるはずだ。」
 まあ、豚の丸焼きだとか猪の丸焼きなんてのは、こっちでは無理だろう。そういう野趣溢れるものは、本山のほうへ戻っている時に食わせている。
「・・・そうか・・・」
「熱はないのか? 」
 はいはい、と、天蓬がニールの首筋に手を添える。熱くはないから、大丈夫、と、確認して亭主に声をかける。
作品名:こらぼでほすと 闖入4 作家名:篠義