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こらぼでほすと 闖入4

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「しょうもないことを騒いでないで、準備に集中しろ。」
 ぐだぐだと文句を吐いているダコスタとハイネを一喝して、虎は管制室を離れた。痛いところを突かれた自覚はあるからだ。



 午後近くに、トダカが顔を出した。もちろん、その前に沙・猪家夫夫も顔を出している。その頃には、空はどんよりと曇ってそろそろ怪しい気配だ。トダカが、各種の酒を持参して、挨拶すると、まず、娘の様子を伺うために脇部屋に向かう。
「あのさ、八戒。」
 もちろん、トダカは、「うちの娘さんの世話をしてくださってありがとうございました。」 と、礼まで述べた。ただ、ニールのことだと判っていても、「娘さん」呼称なのが、捲簾には理解しがたい。
「寺へ嫁いだから、トダカさんにとって、ニールは娘なんですよ、捲簾さん。もうなんていうか、ニールに関しては過保護で猫可愛がりでしてね。」
「あーそういうことなのか。」
「ママニャンさ、『吉祥富貴』に所属することになってからも、精神的に不安定で身体もグダグダだったから、うちのじじいーずが心配して、ああいうことになったって感じだ。・・・・最近、ようやく落ち着いたとこで、まだ心配してるんだ。」
「そうなんですか。見た感じ、そんな雰囲気じゃないけど。」
「じじいーず曰く、『ニールは外面はいい。』とさ。年少組にも、そこいらは気付かせてなかったからな。」
「なるほど、僕らはお客様ですしね。そこまでは判りませんでした。・・・三蔵、そこいらも惚れた原因なんですか? 徒っぽい色気にやられたとか?」
「あるわけねぇーだろっっ。あれは、死に損ないだ。」
 このメンバーだと、ほぼツッコまれ続けるのは、三蔵の役目だ。どう説明したとしても、そこいらの理解は得られないから、沈黙しているが、我慢できなくなると、怒鳴る。
「やっぱり、一日延ばしましょうか? 捲簾。きっと、悟空も心配するでしょう。」
「そうだな。・・・おまえ、俺らが起きる前に、ちゃんと女房の世話をしてたんだってな? 『優しい人なんですよ。』って、俺ら、惚気られちまったぞ。」
 ニールの声真似して、そう言いきると、腹が痛いと、捲簾は笑い転げている。そんな惚気が発生するとは思わなかったらしい。沙・猪家夫夫も、「え? 」 という顔をして、笑い転げた。なんていうか、有り得ない形容詞だ。
「ママニャンがダウンすると、おまえも面倒だもんな、三蔵。」
「そうですか。それなら、慌てて駆けつけて来る必要はないですね。次回からは遠慮させていただきましょう。」
 本当に、こいつらは、人の話を聞きやがらねぇーと、三蔵は内心で呆れつつ立ち上がる。ここに居ると、弄られ役にされるから、逃亡を図ることにした。さっさと、財布を懐に入れると、廊下へ出て行く。
「逃げちゃった。ダメじゃないですか、悟浄、八戒。もっとねちっこく真綿で首を絞めるようにイジメないと。」
「どうせ、遠征中は逃げられないんだから、いいじゃないですか。・・・僕らは、やはり一週間後に追い駆けます。店の予約がありますので、それだけは捌いていかないといけませんから。」
 先に予約が入っているものは、キャンセルできない。後の一週間は、こちらが休むということで、お客様の予約は入れないように手配した。まあ、これで目一杯だ。
「了解した。宿泊先をメールするから、そこへ来い。」
「時期的に、あっちはオンシーズンだから予約しとけよ? 捲簾。」
「そっちは問題ない。向うの関係者が宿は取ってくれる段取りだ。人外専用かもしれんが、別に構わないだろ。」
 紅葉の季節なので、特区の西のほうは、観光シーズン真っ只中だ。ホテルも旅館も、主だったところは予約で満杯になっているはずだが、人外の関係者なら、そちら専用の宿泊施設なり、人間用の特別枠の施設なりを把握している。西へ着いたら、そちらに連絡すれば、手配してくれるようになっている。特区は、神仙界の関係者が五万と存在する。なんせ、八百万な神様たちが暮らしているので、そういうものもあるらしい。アジア圏は、人外の多い地域だ。どこでも、そういう施設があって、人外のものが利用しているから、いきなりでも問題はない。
「さすが、神様枠だと対応が違いますね。」
「おまえらだって使えるはずだぞ。うちの関係者になってるだろ。」
「いえいえ、僕らは普通に人間枠の施設を使いますよ。あなたがたとは種が違いますからね。」
「今更、何を言うんだか・・・うちの子の従者なんだから、遠慮なく使えばいいんですよ、八戒。・・・そうそう、名所巡りと、おいしいもの巡りをしたいんですが、ガイドブックなんてありますか? 」
「金蝉が買ってきてただろ? この間から付箋貼って、悟空と相談してたぜ。」
 童子様は、さっさとガイドブックを買ってきて研究しているらしい。ちょうど、捲簾たちがフリーで留守をした時に、悟空と相談していたのを、悟浄は見ていた。
「え? もう? あなどれませんね、金蝉。捲簾、僕らもガイドブックを用意しないと。負けていられませんよっっ。」
「じゃあ、ちょっくら出かけるか。」
 悟空と食い倒れツアーをするつもりの天蓬も、ガイドブックの入手を亭主に宣言する。亭主も、おう、と、呼応する。元保護者たちは、悟空が一緒に喜んでくれるのが楽しみで仕方がない。そのために、わざわざ遠征しているのだから、力が入るのもわかる。沙・猪家夫夫も、そこいらは理解しているから、「近くの本屋に案内します。」 と、ヘルプする。まだ、食事の時間には少々あるから、先に、そちらへ出向くことにした。本屋までは徒歩十分だ。
「メシの準備はしてあるから、帰ったら即効食えるぜ。」
「久しぶりだなあ、捲簾さんの手料理。」
「簡単なものだぞ。ニールが、いろいろと準備してくれてたからな。」
「ほんと、あの鬼畜破戒僧に、あんな手厚い世話をして・・・そこいらは、ニールの健気さに頭が下がりますよ。」
 ちゃんと、昼食の準備もされていたので、捲簾は、簡単なものを付け足しただけだ。
「僕もねー、ニールのああいうところは尊敬してます。なんだかんだ言って、三蔵の好物ばかりなんですから。」
「そりゃ三年も、あの我侭大王のリクエストを聞いてりゃ、ああなるぞ。最初は、味つけが合わないと食わなかったらしいからな。」
「横暴ですね。よく耐えてますね。やはり、ここいらで、バシッと僕らがケジメをつけさせたほうがいいかもしれません。」
「天蓬、それ、どんなケジメだよ? 」
「やはり、ニールには、それに見合うだけの快感を・・」
「・・・やめてやれ。実家に逃げるから。」
「何を言うんだか、悟浄。そこまで尽くしてくれてる女房に、お返しするなら、そういうことでしょう。僕は返してますよ?」
「返してるんだ。捲簾、返されてるんだ? 」
 からかうように悟浄が、ツッコミを入れると、捲簾もニヤリと笑っている。
「おまえも、ちゃんと返しといたほうがいいぞ。夫夫円満の秘訣だからな。八戒、返してくれないなら、気功波でぶっ飛ばせ。」
「いえ、十分すぎるほどですよ? うちは。」
作品名:こらぼでほすと 闖入4 作家名:篠義