舞花~第一章~
「失礼しまーー・・・って准将?」
出て行ったリザと入れ違いでハボックが入ってきた。
ロイは机に突っ伏して落ち込みの真っ只中だった。
「・・・・・・・じゃま・・」
「・・あー大丈夫っすか?」
「私が間違っているのか!?・・人を買うなど非人道的だ。」
「まぁ、確かにそうっすけど。
花は養ってもらう。花主は命を護ってもらう。取引みたいなもんじゃないっすか。」
「・・・・それでもだな。
フラウズ学院はあの少年達を売って金儲けをしてることに変わりはない。」
「俺はいいと思いますけどね。
昇進して買えるものなら買いたいっす。」
「くだらん。」
ロイはくだらないと吐き捨てるが、
ハボックのように昇進して花を持つことが夢だなどと語るものも少なくない。
花を持つにはそれなりの地位が必要になる。
なぜなら花を持つにはお金がかかる。
まず始めに、花を手に入れる時点で大金が必要だ。
花祭に参加した花の中から選び、学院が決定した金額を支払い花を引き取る。
金額は芸の技術によって個々で異なる。
技術が高ければ高いほど、金額はもちろん上がっていく。
そして引き取った後も芸の精進のために良い師のもとに通わせたりと何かとお金がかかるものなのだ。
その結果、佐官にでもならないと花をもつことは難しいが、大佐にでもなれば花を持っていない者はほぼ居ない。
だが、准将になったにもかかわらず、いまだにロイは花を持たない。
悪目立ちするのは最早仕方のないことなのだ。
「でも、このまま放ってもおけなくないっすか?」
「・・・・。」
昇進は素直に喜ばしいことだと思っているロイだったが、
花に関しては完全にお手上げだった。
イーストでは中央ほど花の習慣は盛んではなかったので、
なんとか切り抜けてきたのだが、中央ではそうはいきそうにない。
中央で月に2度も開催される花祭への招待状、上層部からの嫌味の数々。
部下にまで及ぶ被害。
さすがに知らん顔をするにもそろそろ限界だった。
そろそろ本気でリザに殺されそうだった。
「准将、諦めも肝心っす。」
「だが・・・」
ロイはどうしてもフラウズ学院や花に対して良い印象を持てなかった。
むしろ嫌悪感しかわいてこない。
ロイは自分の努力でここまでのし上がってきた。
確かに部下に守られ支えられてきたが、それは自分で手に入れた仲間だ。
芸を極めたい、何かを極めたいと思うのであれば自分の力でのし上がれ。
他人に金を出してもらい、良い師のもとに通わせてもらい芸を極める。
ふざけるな。
それがロイの本音だった。
『花は花主の宝石だ。』
『花は正装の一部。』
そんな人間を人間と思わない考え方も大嫌いだった。
「でも、今回は行くしかないっすよ。」
「・・どうにかならんのか。」
「中尉がもう準備進めてるんで、」
「・・そうか。」
「下手に逃げると本気で殺されますよ。」
「だろうな・・・。」
明日のことを思うとひどく頭が痛むロイだった。