舞花~第一章~
―私の花―
「箔様に残ったものは動かない手足と、捨てられた花という汚名。」
「なぜそんな奴がまた花を持っているんだ。」
「もちろん学院側はグレイグ中将に二度と花を与えないことにしました。
今日、中将の傍に居た花は正確には花ではございません。」
「どういうことだ?」
「あれは学院を勝手に出て行ったんです。花になる前ですから、正しくは私と同じ蕾。
中将が花を探していると聞きつけ、飛び出していってしまったんです。今は退学処分になったので、蕾でもなければ花でもありません。」
「だが、出入りを許すのは何故だ?」
「これは私の推測ですが、支援金。」
「・・・支援金。」
「花を育てるのにはお金がかかります。
買われることのない花も・・居ます。花を売る際のお金はその花の値段です。
多くとることはありません。なので、学院を存続させるためには支援金が不可欠です。」
私達の中には行く当てのない者が多くいます。
その者達はここで芸を磨くことで居場所を得ることができるんです。
芸を磨くことで、暖かい場所に居られるんです。
普通の生活が出来るようになるんです。
フラウズ学院は花達にとっては大切な家です。
返しきれな大恩がございます。
少しでも花を好きになってもらえるよう、
これから育つ花達のために支援してただけるように、
私達は芸を磨くのです。
「私は君達のことを誤解していたようだ。」
「・・・話しすぎました。申し訳ありません。
そろそろ戻りましょうか、芸を見ていって下さいませ。」
「そうだな。」
「もう大丈夫なのか?」
「はい、すみません。」
ロイは藍とともにもう一度メインホールへ戻ることにした。
今日一日で随分と花に対する印象が変わった。
確かに嫌いな面もある。
それは消えないだろう。
だが、せめて芸を見て帰ろうと思った。
でないと真剣にやっている彼等に失礼だと思ったから。
メインホールに着くと、何やら会場が静まり返っていた。
先ほどまでは四隅で芸を披露する際の音楽が聞こえ、
時折、歓声や拍手が聞こえていたはずだが、今はそれが止んでいる。
そしてその場にいる全員が華舞台を気にしていた。
ロイと藍もそれに習い華舞台の方へと足を進める。
すると見知った顔を見つけた。
「ホークアイ中尉。」
「大佐、いらっしゃったんですね。」
「あぁ、ちゃんと居るさ。それより一体何が起きた?」
「・・どうやら、一人の花が芸を披露するそうで。」
「それで何故こんなに――
「箔様っっ!!!!??」
「何っ!!??」
藍が見つけたのは舞台袖で装飾された剣を持つ箔だった。
格好は先ほどと変わらず、芸を披露するような服装ではない。
それに、箔は松葉杖をついている。
とてもじゃないが剣舞など出来ない。
藍が箔の元へ向かおうとすると、
箔の後ろで嫌な笑顔を浮かべるグレイグ中将が目に入った。
「・・・・こんのっ!!!・・箔様をこれ以上苦しめることは私がっっ――
「待ちなさい。」
怒りで我を忘れかけている藍をロイが引き止める。
離せっと騒ぐ藍にロイが耳打ちする。
「ここで問題を起こせば、君は花にはなれない。」
「・・・・・っ・・」
「それはあの子も望まないだろう。」
「・・・ですがっ!!」
「私に任せなさい。」
「・・・マスタング准将、」