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可能性の話

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波江は絶叫とともに飛び起きた。
薄暗い部屋、自分以外には誰もいない、もうすぐ夜。しかし彼女はいなかった。波江は汗を拭って大きく息を吐き出す。そろそろと立ち上がり、部屋の明かりをつけた。時計を見るともうすぐ上司が帰ってくる時間だ。
「晩ご飯作らなきゃ・・・」
しかし、台所に向かう途中で足から力が抜けてしまい、そのまま座りこんでしまった。震える身体を押さえ込むように、自分を抱きしめてうずくまる。
目を閉じることはできなかった。思い出さないように、暗闇を怖がるように、明るい部屋の、光を反射する床を見つめ続ける。
しかし、その甲斐もむなしくあの映像がひたすら脳裏にこびり付いて離れないのだ。
ただ座り込んだまま、波江はそれに耐えることしかできなかった。

長い時間が過ぎた。いや、それほど長くなかったかもしれない。
どちらにしろ、今の波江には時間に気を配るほどの余裕はなかった。そして、
「みえ・・・波江っ」
誰かが呼ぶ声がして、顔をあげる。これは、にんげんだ。端整な顔の下には、細くて頼りない身体がしっかりくっついている。
「どうしたの?うずくまって。体調が悪いのかい?」
そう言って波江の肩に手をおく。人の手の温もり。
「・・・波江?」
「なんでも、ないわ。ただ、悪い、夢、を見ただけよ」
寄りかかった体は頼りないが、確かにそこに存在して波江を支え、温めた。
彼は波江のそんな様子に少し驚きつつ、また少し面白そうに言葉を返す。
「波江も怖がることがあるんだね」
「そりゃそうよ、人間だもの」
「よっぽど怖い夢だったんだ?」
「・・・そうね」
人の温もりを感るのは久しぶりかもしれない、波江はそう思った。こんなにも温かくて、安心できるんだったか。
自らの首に違和感を感じて、目を閉じた。



作品名:可能性の話 作家名:亜沙覇