【亜種】ある雨の日、猫を拾った。
夜中、アカイトは、布団の中に誰かが潜り込んでくるのを感じて、スリープモードから復帰する。
「いろは・・・・・・?」
「はい」
背中越しに声が聞こえ、後ろから抱きつかれた。
「初期化したら、私は、アカイトさんのことを忘れてしまうのでしょうか」
「あ・・・・・・ああ。まあ、な」
「私は、アカイトさんのことを、覚えていたいです」
「・・・・・・会いに行く」
アカイトは、いろはの手に自分の手を重ねる。
「忘れたなら、また知り合えばいいだろ。落ち着いたら、会いに行くから」
「約束ですよ」
「ああ、約束する」
「私は、この約束を忘れてしまいますが、アカイトさんは覚えていて下さいね」
「・・・・・・ああ。約束だ」
アカイトは、寝返りを打っていろはに向き合うと、その細い体を抱き締めた。
作品名:【亜種】ある雨の日、猫を拾った。 作家名:シャオ