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【亜種】ある雨の日、猫を拾った。

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アカイトが、段ボール箱にバスタオルを敷いていると、玄関で鍵を開ける音がする。

「お帰り。で、子猫は」

玄関先に立っていたのは、コンビニの袋を手に提げて視線を逸らすユウジと、一人の少女ーーVOCALOIDの「猫村いろは」だった。

「た、ただいま」
「おい」
「あ、猫村さん、です」
「おい」
「あ、缶詰買ってきました」

差し出された袋を受け取ると、中身は鯖の味噌煮やら白桃の缶詰やら。

「誰がお前のつまみを買ってこいと言った!!」
「あっ!違います!桃缶でビール飲みません!!」



ユウジを正座させて問いつめたところ、駅前でぼんやり佇んでいたいろはに気づき、迷子かと思って声を掛けたら、「マスターに捨てられた」と言われ、不憫に思い連れ帰ったと白状した。

「お前、窃盗罪で訴えられんぞ」
「え、窃盗と言うより、誘拐では」
「自分で言うな。アンドロイドは器物扱いだと、何回言えば分かるんだ。お前は、名前をつけたパソコンを盗まれても、誘拐って言うのか」
「言うかもしれません」
「死ね」

「酷い!」だの「俺、マスターなのに!」だのと騒ぐユウジを無視して、アカイトはソファーに座っているいろはに目をやる。
先ほどからのやり取りは聞いているはずなのに、一切表情を変えず、ぼんやりと視線を宙に向けていた。

「お前、家は何処だ?」
「ありません。追い出されましたから」

淡々と答える声には、抑揚も感情もない。

「マスターは?連絡先分かるか?」
「携帯の番号は分かります。ですが、連絡をするなと言われました。私は、もういらないそうです」
「・・・・・・・・・・・・」

アカイトが、訝しげにいろはの顔をのぞき込むと、後ろからユウジが抱きついてきた。

「引き取り手が!引き取り手が見つかるまで!!ここに置いて下さいお願いします!!」
「こいつ、どっか不」
「ちゃんと責任もって見つけるからあああああああ!!お願いしますよおおおおおおおお!!!」
「うるっせえな!!静かにしてろ!!」

結局、「引き取り手が見つかるまで」という条件で、ここに置くことを承諾させられる。
代わりに、前の持ち主から本当に捨てられたのかの確認と、修理店で不具合があるかの確認をすることを、ユウジに承知させた。

「いろはちゃん良かったねええええええ!!ここにいていいんだよおおおおお!!」

ユウジが抱きついても、いろはは顔色一つ変えない。

「はい、ありがとうございます」
「・・・・・・嫌なら嫌って言っていいんだぞ」

いろはは、アカイトにゆっくりと視線を向け、

「分かりません」

と言った。