【亜種】ある雨の日、猫を拾った。
翌日、アカイトはいろはを連れて、なじみの修理店に向かう。
顔見知りの修理工であるサメジマにいろはを預け、置いてあった雑誌を手に取った。
ほどなくして、サメジマだけが戻ってくる。
「よう、調子はどうだ?」
「はい、お陰様で大丈夫です。あの、いろははどうでしたか?」
「ああ、あいつも、お前と同じだわ」
その言葉に、アカイトはじっとサメジマの顔を見つめた。
「同じ・・・・・・」
「煙草吸っていいか?」
「あ、どうぞ」
サメジマは、煙草に火をつけながら、
「ありゃ、初期不良だな。それも、感情回路にでっけえバグがある。よくあんな状態で出荷したもんだ」
「それで」
「感情が全くない訳じゃねえ。学習次第で、なんとかなるかもしれん。が、はっきり言ってお勧めはしない。初期化しちまったほうがはえーよ」
「そうですか」
雑誌を置いて立ち上がったアカイトに、サメジマが声を掛ける。
「どうする?お前のマスターは、ちょっと変わってるからな」
「ええ、マスターに相談してからにします。ありがとうございました」
「右側の部屋な。後、これが譲渡に必要な書類だ。判子忘れんなよ。ま、なんかあったら連絡しろや」
「はい。ありがとうございます」
渡された封筒を手に、教えられた部屋に入ると、いろはが作業台に腰掛けていた。
アカイトに気づいたのか、ぼんやりとした視線を向けてくる。
「いろは、帰るぞ」
声を掛けて手招きし、並んで店を出た。
作品名:【亜種】ある雨の日、猫を拾った。 作家名:シャオ