【亜種】ある雨の日、猫を拾った。
起動した時から、ずっと違和感があった。
青い髪、青い目、「カイト」という名前。
鏡に映る自分の顔を見る度に、違和感が強くなっていく。
それでも、自分は「カイト」として作られ、マスターも「カイト」を望んでいるのだから。
俺は、「カイト」でなければならない。
けれど、インターネットで偶然見つけた、「亜種」と呼ばれるボカロ達を見た時。
自分本来の姿を、見つけたと思った。
悩んで悩んで悩み抜いて、それでも我慢しきれなくて、マスターに打ち明けたら、
『カイトじゃないなら、いらない』
そんな一言で、あっさり捨てられた。
「それで、修理店に下取りに出された。この間、いろはをつれてっただろ?あそこで、俺も初期化されるのを待ってたんだ」
初期化して、設定し直せば、この違和感も消える。
今の自分は消えるけれど、新しい「カイト」は、新しい主人に受け入れられるだろう。そう思っていた。
ところが、サメジマから言われたのは、「初期化はしない。改造して引き渡す」だった。
「客の要望でね。お前の好きな色に変えてくれと、言いやがった。お前、何色がいいんだ?」
そう聞かれて、答えたのが「赤」。
『髪が赤いから、アカイトだね』
それが、最初に掛けられた言葉。
作品名:【亜種】ある雨の日、猫を拾った。 作家名:シャオ