【亜種】ある雨の日、猫を拾った。
ある日、リビングでドラマの再放送を見ていたいろはが、アカイトを呼ぶ。
「どうした?」
「この人は、何故怒っているのでしょう?」
いろはが示したのは、不機嫌になった女を、男がなだめているところだった。
「あ・・・・・・あー。見てないから分からん。ごめんな」
「そうですか」
「でも、怒ってるのは分かるんだな」
アカイトの言葉に、いろはは少し考えてから、
「男性の方が、「そんなに怒るなよ」と言いました」
「ああ、そうか」
「やはり、私は壊れているのでしょうか」
そう言って、目を伏せる。
「マスターにもアカイトさんにも、ご迷惑をお掛けしているのでしょう。初期化すれば、そのような事もなくなるのでしょうか」
「そんなこと」
アカイトは言いかけて、いろはが「落ち込んでいる」のだと、思い当たった。
「いろは、こっちに来い」
「はい」
いろはの腕を掴んで立たせると、窓際に連れてくる。
ちょうど夕焼けが空を染め、外は鮮やかなオレンジ色に包まれていた。
「この景色を見て、どう思う?」
いろはは、少し考えてから、
「綺麗だと、思います」
と答える。
「そうだな。俺もそうだ」
アカイトは、いろはの頭に手を置いて、
「大丈夫だよ。少しずつでも、感じられるようになってるじゃないか。もっと自信を持てよ」
「・・・・・・はい。ありがとうございます」
作品名:【亜種】ある雨の日、猫を拾った。 作家名:シャオ