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こらぼでほすと 闖入7

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 人外の関係者が多い特区では、やはり観光シーズンに、人外のモノがやってくることが多いので、京都辺りだと、そのための部屋をいくつかキープしてあるのだ。その一部を貸してもらっていると、捲簾が説明してくれた。
「あんまり意識してませんが、特区は神仙界の関係者が多いんですね。」
「東には少ないのかもな。てか、俺ら関係者だけど、所属が違うからなあ。」
 特区は八百万の神がいることで有名な地域だ。もちろん、上司様ご一行のいる地域も多いことは多い。アジア圏と呼ばれる場所は、多神教の地域だから、そこそこ、どこにでも神仙界の関係者がいる。で、まあ、そういう方たちも観光なんてことはしたりするので、そのメッカである京都辺りだと、そういうことになっているらしい。
「一泊は、一緒に泊まります。翌日、僕らのほうは、大阪へ移動しますので、残り一泊はいちゃこら爛れたことでもしてください。」
 明日の移動に、全員がついて来ることになったが、まあ、翌日の一泊だけは夫夫で、ごゆっくりと、どこぞの元帥様が許してくれた。で、大阪に二泊して、そこからヘリで移動して、京都の北の端に、カニを食べに行く予定で一泊、そこから戻って京都で一泊というスケジュールが組まれていた。どんだけ食うつもりだよ、と、悟浄は、その予定表を見て唸っている。あちらにはないものをチョイスしていたら、こちらの関係者が予定を組んでくれたらしい。見事に、観光がなかったりする。多少は腹ごなしの散歩も入っているが、それだって神仙界関係ではない。有馬温泉の翌日なんて、中華街の散策と書かれているが、これは、どう考えても買い食いツアーであるだろう。
「悟空を喜ばせるってことなら、こうなるんじゃないですか? ほら、こっちは食べ物がおいしいことでも有名ですしね。」
 神戸牛、カニ、中華、たこ焼き、お好み焼き、焼肉、スィーツと、ありとあらゆるグルメがある。もちろん、普段から食べているものあるのだが、本場は、こちらだ。
「これで、親善交渉って名目つけてんだぞ? あの菩薩も、大概に甘いよなあ。」
「だって、全員が揃うなんて、久しぶりですから。それぐらいは融通してくれたんですよ。」
 全員が顔を合わせるなんていうのは、本当に久しぶりだ。だから、多少のことは目を瞑って、あちらも送り出してくれたらしい。
「そう考えると、うちのほうは平和だな? 」
「そうですね。これといって大きな騒ぎはないらしい。でも、人間界が荒れれば、あちらにも影響はあると思います。」
「荒れ具合によるけど、『吉祥富貴』が暴れるぐらいなら影響はないさ。」
 人間界で、騒ぎがあれば、神仙界にも影響はある。だが、それも、些細なものなら影響はない。キラたちが動くぐらいでは人間界は揺るがない。ただし、それも相手による。相手のアローズや連合が、億単位の殺略でも仕掛けてくれば、影響はあるだろう。だが、さすがに、そこまでのことはないはずだ。たかだか、人間同士の戦闘ぐらいでは億単位の損失なんてものは出ない。
「召還されれば戻りますけどね。・・・・まあ、僕は、その場合の三蔵の動向が非常に楽しみです。」
「ママニャン強奪していくだろうな、あいつ。それは、俺も楽しみだ。どうやって攫うか、じっくり観察してやろう。」
「三蔵のことだから、問答無用で連れて行くでしょう。」
 あちらの神仙界で影響があれば、悟空を筆頭に、沙・猪家夫夫と三蔵にも召還命令が下る場合がある。その時の三蔵の行動は予想がつくだけにおかしい。くくくく・・・と、夫夫ふたりで笑って、ベッドにダイブする。やはり、旅行だと思うと、楽しい気分になる。それも、懐かしい顔が揃った同窓会みたいなノリだ。
「まあ、お付き合いはするさ。このメンバーだと言いたい放題できるしな。」
「隠し事のないメンバーは気楽です。」
「ははは・・・まあなあ。」
 大きなダブルベッドのスプリングが心地よい。このまま、のんびり昼寝でもしていたいところだが、そうは問屋が卸さない。いきなり、ピンポンラリーが始まって、沙・猪家夫夫は起き上がることになる。





 案内されたのは、京都でも有名な花街だった。こんなところに似合いそうなモノは、ここにいない。強いてあげれば。捲簾や天蓬なら楽しめるだろうぐらいのことだ。
「まあ、こっちの歓迎会も兼ねているんだ。おまえらが来るまで待って貰ってたんだよ。」
「悟空や金蝉さんは、こういうところは大丈夫なんですか? 」
「メシ食うのに、綺麗な妓女たちの舞や音楽がついてるぐらいで考えてればいいんだとさ。悟空は、メシさえ充実してりゃあ、文句はないだろう。」
 そんな捲簾の説明で、いいのか? と、首を傾げつつ案内される。通りの真ん中に川が流れて優雅な石畳の街路がある。川の側には柳が植えられており、夜風で、ゆらゆらと枝が揺れている。案内役がクルマから降りた一行を案内してくれた。そこは、その通りから細い路地へ一本入ったところにある茶屋だった。格子戸を潜ると、長い石畳があり、玄関は、さらに、その奥だ。
 玄関には、年季の入った女将らしき人物が、三つ指を付いて迎えている。なんとも特区らしい風情のある場所だ。
 歓迎会といっても、別に、こちらの偉いモノが乱入するなんてことはない。案内役をしてくれている関係者と女将が、こちらのやり方に添って、食事の準備をしてくれる。猫足の膳が四つばかり各人に運ばれてくる。そこには、こちららしい京懐石が並んでいる。
「うわぁーこれ、食い物なの? すげぇー綺麗っっ。」
 悟空は、それらの膳を見回して大喜びだ。全てが見立ての料理なので、細工されていて見た目にも美しい。紅葉の季節ということもあって、秋の見立て料理です、と、女将が説明してくれた。ニンジンはもみじの形、しいたけにはもみじのような切込み、生湯葉は刺身だが、これにもクコの実ともみじの形に切られた栗が散りばめられている。秋の川をイメージしたものだそうだ。
 いただきまーす、と、元気良く斎天大聖様が箸を出す。それを見てから、大人たちは食前酒だという梅酒に口をつける。まったりとろりとした梅酒は、少し甘いが、かなりのアルコール度数のものだ。
「これ、美味いなあ。土産にいいんじゃないか? 」
「そうですね。てか、悟浄、誰の土産です? 」
「店の面子。なんか買って帰らないと悪いだろ。」
 有給休暇というか、上司様ご一行の接待ということで、店は休ませて貰っている。さほど忙しい時期ではないが、一週間ともなると八戒の抜けた穴を埋めるのは大変だろう。九月に休みを貰った時は、連休だったから、店への被害は少なかったが、今回は丸々一週間、稼動している状態だから、それなりに土産くらいは用意しないと、と、悟浄は言う。
「これは、梅酒の古酒で、量はございませんの。もう少し年代の若いものでしたら、用意させていただきますえ。」
 悟浄の呟きに、女将は、はんなりとした言葉で答えた。今回、あちらの神仙界からの訪問だから、と、用意された特別なものらしい。
「量はいらねぇーが、一合くらいなら、どうにかなるのか? 」
 そして、なぜか、そこに食い下がったのは坊主だ。
作品名:こらぼでほすと 闖入7 作家名:篠義