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こらぼでほすと 闖入7

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「へぇ、それぐらいでしたら。」
「すまねぇーが、瓶に詰めてくれ。」
「承知いたしました。お土産どすか? 」
「ああ、うちの死に損ないの女房の寝酒にな。一口でお陀仏するから、一合で十分だ。」
 その言葉に、周辺一帯が固まった。坊主が、土産を用意するなんていうのは、サルに対してぐらいだと思っていたからだ。
「それでしたら、お発ちになる折に、お届けさせていただきます。これは温度変化は好みませんので。」
「それでいい。」
「奥様がいらっしゃるのですね。」
「まあな。」
「三蔵、これ強い酒なんだろ? いいのか? 」
「このまま飲ませねぇーさ。お湯割りして飲ませたら、ちょうどいい。」
 眠れないと言うことがあるので、寝酒に付き合って寝かせるのだが、たまには、こういう変った酒もいいだろう、と、坊主は考えた。だいたい、薄いお湯割りで、ほよほよするのだから、それなら良い酒のほうが酔うのも心地良いはずだ。
「それなら、俺は、おつまみにしようかな。刹那たちにはお菓子を探そうと思ってたんだ。ねーねーおばちゃん、そのお酒に合うつまみってある? 」
 横手から、もりもりと食事を平らげていた悟空も参戦してくる。てか、気品のある女将に、おばちゃんとは暴言だが、客商売の女将は、微笑ましそうに悟空の言葉に返している。
「こちらのお漬物は、いかがですやろ? 東にはあらしまへんの。」
「漬物? ママ、漬物って食うのかなあ? 三蔵。」
「黄色いのは食ってたぞ。白菜もいけてたな。」
「そういう感じ? 」
「それでしたら、召し上がらはりますやろ。坊ちゃんのお母様ですのん? 」
「そうだよ。留守番してるから、土産買わないといけないんだ。どこに売ってるの? それ。」
「それも用意させていただきます。土産物屋のより、ええのがありますのんよ。うちで漬けてますから、味見してみはりますか? 」
「うんっっ。」
 京都の漬物は独特で種類も多い。こちらにしかないのなら、それは珍しくていいだろう。女将は一端、座敷を出て準備に向かってくれた。そして、一同沈黙したが、すぐに、坊主とサルを除いて吹き出した。
「どんだけ愛妻家になってんだよっっ、三蔵。」
「あははははは・・・・この鬼畜暴言坊主が、女房に土産ですって? どこまで笑いを提供してくれるんですか? 」
 金蝉は、くくくく・・っと笑いを堪えているので、ツッコミはないが、バンバンと隣りの悟空の背中を叩いている。
「・・・三蔵、ニールには優しいんですね? あはははははは。」
「おまえら親子、もうニールなしじゃ生きられねぇーんだな? そーなんだな? 」
 いやまあ、沙・猪家夫夫は三蔵がニールのことを、そこそこ大切にしているのは知っていたが、まさか、土産を用意するとは思わなくておかしくて笑い転げている。
「だって来られなかったんだからさ、こっちにしかないもん土産にしたほうがいいじゃんっっ。いつも世話かけてんだしっっ。」
 坊主は、けっっと舌打ちして無視しているので、代わりに悟空が反論する。何かと世話してくれているのだから、こういう時に、ちょっとは喜ばせたいというのが、悟空の気持ちだ。刹那も帰っているのだし、旅の話をしながら、おいしいお菓子でも食べさせてあげたい。悟空の気持ちは、よくわかるので、うんうんと上司様ご一行は頷いている。こういう優しいところが、悟空らしい。そして、好奇の視線は、坊主に集中する。
「うるせぇーぞ、てめぇーらっっ。あいつ、お里で極上の酒ばっか呑んで、舌が肥えてるんだぞ。たまには、お里に太刀打ちできるもんぐらい呑ませてみたいんだよっっ。・・・・これ以上、笑うなら撃ち殺すぞ。」
 ニール本人は理解していないが、お里のトダカが所蔵している酒というのは、ものすごく値の張るものが大量にある。あちらでも、トダカの晩酌に付き合っているから、「なんかスッキリしてるのに、甘い香りがしておいしかった。」 とか感想を漏らすので、対抗してみたくなったらしい。
「お里のお父さん、趣味が酒だからな。そりゃそうだろう。」
「三蔵は焼酎なら、なんでもいいですもんね。あちらとは格差がありますよ。」
「確かに、ニールのお父さんが用意してくれた日本酒は美味かったな。」
「舅に盗られない様に、餌付けするんですね? それなら、いいお酒も探しに行かないといけませんね? 」
 四人四様に納得した台詞を吐いて、ツッコミはやめたが、まだ顔は笑っている。なんていうか、以前の殺伐としていた坊主とは思えないほど微笑ましい。人間年を取ると丸くなるっていうのは、本当なんでねぇーと、しみじみと八戒がトドメを刺す。

 漬物は、色とりどりのもので、少し白飯も運ばれてきた。まず、紅いのから、と、ぱくっと悟空は口に入れて、もぎゅもぎゅしてご飯も食べる。
「すっぱいけど、メシに合う。こっちの丸いのも、ちょっとすっぱい。」
 釣られて、みんな、味見すると、これは酒に合いそうな味だ。燗をした日本酒も運ばれてきて、捲簾は、そちらと合わせてやっている。
「いいな、これ。酒にも合う。」
「僕、この白いのが好きですね。女将さん、これも自家製ですか? 」
「へぇ、それは千枚漬けと申しまして、こちらの名産です。まだ、季節としては、少おし早よおすけど、これからのモノです。」
 懐石そっちのけで、ばくばくと漬物を食べてしまう。まあ、生ものなので、あちらに持ち帰るのは無理だから、寺に戻ってからのアテにするつもりで、これも注文しておくことになった。
「うちにも漬物というものは存在しますが、材料がまったく違うので楽しいですね。」
 もちろん、あちらにも漬物はあるのだが、こういう生しいものではない。完全な塩漬けが多い。発酵食というのも風土で違うものだから、上司様ご一行にも珍しいものだ。防腐剤の添加したものなら持ち帰れないこともないのだろうが、薬臭いものは、どこぞの菩薩は嫌がるに違いない。
「さあさあ、味見はお仕舞いにしておくれやす。焼き物と揚げ物がまいりますえ? 」
 粗方なくなった漬物の皿は退かれ、次の料理が出てくる。そちらも見立てになっていて細工されたものばかりだ。
「うちのほうとは、違うな。」
「当たり前だ。おら、空けろよ。新しい燗酒がきたぜ。」
 金蝉も、見立て料理は気に入ったのか、ちまちまと箸を勧めている。三蔵が、杯を空けさせて、新しい酒を注いでいる。見た目は、よく似ている二人が、そうやっていると、兄弟のような感覚だ。
「サル、おまえも飲むか? 」
「いらねぇー酒で腹が膨れたら入らなくなっちまう。天蓬、それ食わないならくれ。」
「はいはい、どうぞどうぞ。悟空、足りないなら追加してもらいましょう。あなたには、物足りないでしょ? 」
 懐石は、基本、野菜が多い。それに、量も少ないので、これでは足りないだろうと、天蓬が追加しようとしたが、いえいえ、と、女将が止めた。これから、まだまだ料理は出てくるし、後でデザートも召し上がる予定なのだから、増やさなくても大丈夫です、と、おっしゃる。
作品名:こらぼでほすと 闖入7 作家名:篠義