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永遠に失われしもの 第15章

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「ラウル刑事、情報提供者がお見えに
 なってますが・・」



 いつもコーヒーを運んでくれる部下が、
 ラウルにそう告げた。



「どの事件関係の情報だって?」


「なんでもオレイニク公爵家で昔、
 侍女をやっていたという女姓が・・」



 ラウルは目を輝かせて、
 一階まで階段を駆け下りる。

 オレイニク公爵家の情報が乏しい現状では
 元使用人など事情の分かる証言者の出現は
 ラウルにとって、
 喉から手が出る程欲しいものだったのだ。


 署の受付では、小柄でやや痩せ気味な、
 質素な服装ではあるが、それが返って
 彼女のつましやかさを表している様な、
 シモーネ・カサ−レと名乗る中年の女性が待っていた。



「どうぞ、こちらへ、シモーヌさん。
 凶悪犯罪課刑事のラウルと申します」


 その女性を聴取室へ連れて行くのさえ
 待ち遠しいほど、
 ラウルの頭の中では、
 聞きたいことが山積みになっている。



「まず貴方の事からお聞かせ願えますか?」


 シモーヌと名乗る女性は、
 今は、地元名士に仕えているが、
 昔まだ年端も行かぬ頃、
 ポーランドに出稼ぎに行き、そこで
 オレイニク公爵家の女中見習いの職に
 ついたという。

 彼女によれば、
 先代のアルトゥール・オレイニク公爵は、
 非常に敬虔なキリスト教信徒で、
 しかも性格も大変厳格だった。


 戦争後のごたごたで婚約者と破談になり、
 以来、貴族としては遅い三十五まで、
 誰も娶らなかったが、
 ついにまだ十五になったばかりの
 輝くばかりの金髪の美しい貴族の少女と
 結婚することになった
 そしてシモーヌも彼女の世話をするために
 雇われることとなったのだ。
 
 だが結婚しても、年の差のせいか、
 またはアルトゥールの厳格な性格ゆえか、
 夫婦とは名ばかりと噂されるほど、
 二人の仲は疎遠で、
 子供に恵まれることもなかった。


 二人の結婚から三年経ったある嵐の夜更け
 一人の旅人が、
 公爵家に一夜の宿を求めにきた。
 
 主人であるアルトゥールと執事は
 ドイツに取引で出ており数日不在で、
 下男が旅人を招き入れ、客間に通した。

 
 一週間経ち主人が帰ってくるのと入れ替えに、嵐は止み、
 旅人の姿は屋敷から忽然と消えていた。

 
 そして間もなく、夫人は身ごもったのだ。
  
 
 口にこそ出さなかったが、
 屋敷にいる者誰もが、
 その子の父親は公爵ではないのではないか
 と思っていた。