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永遠に失われしもの 第15章

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「このまま待っていれば、
 彼女は帰ってくるのかい..?」



 葬儀屋は、
 シモーヌのリビングの暖炉の上の蝋燭を、
 長く黒い爪で弾いて倒して、遊びながら
 セバスチャンに尋ねる。



「さぁ、どうでしょう。
 彼女の体は帰ろうとするでしょうが、
 その前に
 お亡くなりになるかもしれませんね。
 あの堅物死神に聞けば、
 わかるでしょうが..」



 決して自分には教えまいと考えていた、
 漆黒の執事の表情を読み、葬儀屋が言う。



「では、小生から聞いてみるさ...」


「一緒に帰らないと、
 またあの方がうるさいでしょうから、
 ちょっとだけ寄りたい所があるので、
 つきあって頂けませんか?」



 二人はシモーヌの家を後にした。


 正午を過ぎて、陽光がますます強くなり、
 中庭の花の色も勢いを増している。
 セバスチャンと葬儀屋が消えた後、
 ウィルは、前と同じくスツールに座って、
 持参した本を読んでいた。

 開かれた中庭側の窓からは、風に乗って
 潮の香りが運ばれる。
 静寂な午後の中で、ウィルは本から目を離し、寝椅子に横たわるシエルを眺める。


 先程見たときと、まるで変わらぬ姿勢に
 満足しながら、
 ふとその弛緩しきった腕と脚に目をやる。
 その先には自分が嵌めた重そうな金属性の
 枷と、千切られた鎖が見える。

 もういちど本に目を戻しかけてから、
 本を閉じて脇に置き、また枷を眺めた。


 たとえ、意識がないにせよ、
 細い華奢な腕と足に恐らく相当の負担を、
 かけているだろう。

 ウィルは立ち上がって、
 デスサイズを伸ばし、枷を持ち上げる。
 やはりその下の皮膚は枷にこすれて、
 赤みを帯び、擦り傷状になっていた。

 それが上からの命令であったとはいえ、
 ウィルにとって、拷問のような仕事をした
 のは初めてのことで、シエルのこの姿に、
 多少の気の負い目を感じてないと言えば、
 嘘になった。

 

 ・・相手がセバスチャン・ミカエリスなら
こんな風に感じることはないでしょうが・・



 それにも増して、今朝方グレルが四肢を、
 セバスチャンに縛られているのを見て、
 自分も同じ趣味だと言われるのには、
 全く我慢がならなかった。

 デスサイズで鎖を枷から完全に断ちきり、
 ついで枷を切るために、シエルに
 近づいた。
 
 
 思ったよりも、特に足の枷は、
 シエルの足首の骨にがっちりと噛んで、
 食い込んでしまっていて、
 デスサイズの刃を通すのも中々難しい。

 シエルの足元に屈んでデスサイズの刃を、
 シエルの足首と枷の間に入れ、
 必死に取ろうとしているときに、
 中庭側から、この時一番ウィルにとって
 聞きたくない声が響いてきた。



「私のぼっちゃんに、
 何をなさっているんですかっ貴方は!!」


 
 日頃の冷静な態度はどこへ行ったか、
 セバスチャンは、血相を変えて
 ウィルに迫る。

 ウィルは、すぐデスサイズで
 近づくセバスチャンを威嚇したい所だが、
 あいにく肝心のデスサイズは、
 きっちりと枷の間に嵌ってしまい、
 抜く事ができない。


 セバスチャンは、ウィルのタイを引っ張り
 上げて宙吊りにしようとするが、
 ウィルも応戦して、
 セバスチャンの首を絞めにかかった。



「ただ・・枷が・・きつそう・・で・・
 外そうとした・けです・・
 その手を・・どけなさい・・汚らわしい」


 セバスチャンは紅く燃えかかった瞳を沈めて、横目でちらりとシエルの足枷をみる。
 そして一息吐くと、
 セバスチャンはその手を緩めた。


 事も無げに指で弾いて、枷を外すと
 挟まっていたデスサイズをウィルに
 投げ渡す。



「貴方にそんな優しい心があるとは、
 知りませんでしたよ」



 セバスチャンは言葉でこそ、
 そう言いながらも、
 相変わらず不信感を抱いている口調と、
 表情で言った。



「別に優しさではありません。
 ただアナタと一緒にされるのが、
 嫌だっただけです」