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永遠に失われしもの 第15章

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「もう一杯お召し上がりになりますか?」



 ラウル刑事は長く話し続けてきた
 シモーヌに勧めるが、彼女は首を振り、
 一刻も早くここで話してしまって、
 くびきから逃れたいかのように話し出す。



「もうその時には、レオ・アウグスト様は
 成人に達しておられ、美しく、それはもう
 禍々しい程に美麗になっておいででした。

 背は高くなり体つきは細身ながらも、
 十分な筋肉がつき、
 さながら古代の彫刻のようでしたが、
 少年時代の美しさは衰えるどころか、
 ますます華やかさを増し、
 爛熟した果実のようでございました。

 そして、カール様との罪深い関係も・・
 止むことはなかったのです」


「そしてリーシェンに行かれたと・・」


「はい、カール様がレオ・アウグスト様を
 お連れになって館に戻られたときの、
 アルトゥール様の蒼ざめようといったら。

 まるでこの世の不幸と呪いを、
 一身に背負われたようなご様子で」


「それで何が起きたというのです?」


「凍りついた晩餐が済み、執事と下男以外の
 使用人が離れの使用人住居に下がって、
 誰もが眠る時間でした。

 夕方の雷鳴と共に、風は次第に強くなり、
 その時間では既に、木々を薙ぎ倒さんばかりに吹き荒れていました。

 天が裂けるほどの雷鳴と、強烈な閃光が
 屋敷の中をあまねく照らしたその時、
 甲高い女の悲鳴が、わずかに雷鳴の間に
 聞こえたのです。


 私は急いで階段をおり、
 広間に向かいました。

 広間の窓はその嵐の中、開け放たれており
 広間の扉を開けると同時に、
 物凄い風雨が私を押し戻そうとしました。

 懸命に瞼を開け見ようとしましたが、
 広間の蝋燭は消え、暗闇が広がるばかりで
 誰もいないのかと思い、窓を閉めようと
 中に入ったときに、
 また稲光が部屋を突き抜けました。
 
 そこに照らし出されたものは・・

 奥様がカール様とアルトゥール様に
 胸を前後から剣で突き刺されている光景
 でした。

 奥様はもはや立っていられる状態ではない
 ご様子でしたが、
 二人の剣によって倒れることも叶わず、
 カール様とアルトゥール様は、
 奥様にも目をくれず、
 お互い殺気だった目で、
 睨みあっていらっしゃいました。

 そして、レオ・アウグスト様は・・
 窓の外に立ってらっしゃいました。
 恐らく奥様の返り血をあびて、
 服は鮮血に染まりながら・・

 手には、奥様が後生大事に手放さなかった
 旅人の外套と、トランクを持ち、
 そしてその時初めて、私は、
 レオ・アウグスト様の、
 お声を聞いたのです」


「彼は何と言ったのです?」


「『またいずれ、お会いしましょう』
 と流麗で上品なアクセントで・・
 一つも動転することなく。

 艶美な・・それでもその場では、
 凶悪にしかみえない微笑と共に、
 彼は嵐の中に消えていったのです。


 アルトゥール様は剣を離し、
 ご自分の首元を触ってから、
 恐ろしい形相でバルコニーに向かい、
 消えていったレオ・アウグスト様の事を
 追いかけようとなさりました。

 カール様は奥様の胸から剣を引き抜き、
 アルトゥール様の背後から、
 さらに彼を刺し殺そうとした所に、
 駆けつけた執事と下男によって、
 体を押さえつけられたのです。

 奥様は倒れる間際に、
 レオ・アウグスト様の名前を一度呼んで、
 そのまま絶命されました」


「二人の殺し合いの最中、止めに入った夫人
 が殺されてしまったという事ですか?」


「奥様は長い間、
 正気を失ってらっしゃったので、
 どういうお積りで
 そうされたのかは分かりませんが、
 恐らくはレオ様を
 かばってのことかもしれません。

 ともかくオレイニク公爵家において、
 兄と弟が互いに剣で、結果的に奥様を、
 殺めておしまいになられたのです。

 私はその後すぐにお暇をもらい、
 母国へ帰ることにしたのです」


「ありがとうございます。
 大変参考になりましたよ。

 では早速ですが、
 レオ・アウグスト・オレイニクの似顔絵を
 作るのに協力してもらえますか?」


「その必要はございません。
 カール様が描いた
 レオ様の絵をお持ちしましたから」