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永遠に失われしもの 第15章

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遠くでセバスチャンの声がする・・

 
(僕はまたセバスチャンにそっくりな少年を
 見ている)


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 ガラスを通して和らいだ陽射しを受け、
 薔薇の葉についた水滴が一瞬煌くと、
 葉脈をつたって空中へと放たれ、
 白すぎる肌にぽたりと落ちた。

 少年は薔薇の温室の煉瓦の床の上に
 うつ伏せに寝かされ、顔を横に向け、
 漆黒の髪が煉瓦の上で乱れている。

 横で咲く白薔薇と同じ色のシャツの襟元が
 乱れて、
 青白く細い妖艶な首筋が見えている。

 
 金髪の男は、その首筋に手を伸ばすと、
 後ろから両手で首を思い切り絞めながら、
 腰を規則的に動かした。

 既に死んでいるかのように、
 少年は何も言わず、呻き声一つあげない。

 ただその紅茶色の瞳だけが、
 ほんのつかの間の間、細められ、
 苦痛を表しているようだった。


 ****************************


 なぜこいつは、
 為すがままにされてるんだ?

 何故泣き叫ばない?
 何故力の限り抵抗しない?

 自尊心はないのか?
 誇りは?


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 金髪の男は事を終えて、立ち上がる。
 服を直して、傍らのイーゼルを寄せ、
 画筆を片手にキャンバスに向かう。
 
 しばらくして男は、同じ格好のまま
 横たわる少年に見えるように、その絵を
 運ぶ。


 絵の中では、
 少年は足を組んで椅子に座っており、
 肘掛に肘をつき、その手に顎をのせて、
 頭を気持ち傾げ、正面を向いて、
 悪戯そうな微笑を浮かべていた。

 そして、
 僕が見ていることに気づいたのか、
 二人とも、こちらを一斉に見る。

 絵の中の少年の微笑が、笑いに変わり、
 その口からキャンバスが裂け、
 どろっと大量の黒い血が流れ出し、
 うつ伏せになった少年に降りかかった。


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 いや、僕の口からも流れ出ている。
 どす黒い血が、とめどもなく・・