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永遠に失われしもの 第15章

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「この不快な空気・・
 この女も悪魔だったのですね」



 ウィルは女を、露骨に忌まわしいもの
 として扱い始めた。



「いいえ、正確には違います。

 この女性に憑いている悪魔の実体は、
 こちら側には来ていません。

 夢喰い同様、この女性の見る夢を通じて、
 身体を乗っ取り、魂を蝕んでいく−−
 
 さらにその夢に出る者に伝染し、
 とり憑いていく。
 いわば悪疫のようなもの」



「大方絵を奪いに来たんだろうが、
 生憎もう私は持っていないんだ、
 悪いけどねぇ・・

 カールの夢は実に美味かったよ」



 唾を音を立てて飲み、喉を鳴らしながら、
 物欲しげに女はセバスチャンを凝視する。



「ええ、そうでしょうね。
 貴方は実に、
 楽しんでいらっしゃった様ですから。
 カールの妄想を肥大化させて」


「カールが思うようにお前の躯を弄び、
 犯しつくす様は、
 お前にも見せてやっただろう?
 どうだい?楽しめたかい?」


「それは正直吐き気がするだけでしたよ。
 貴方のご趣味と合わせてあげられなくて
 申し訳ありませんが」


「カールは、お前が淫らに乱れ狂っている
 夢をとても気に入っていたのにねぇ・・

 今から、またお前に入り込んで、
 夢を堪能させてあげるよ。

 今のお前はたやすい。
 あの時より、
 さらに深く絶望しているからねぇ」



 目の前の女の身体が縦横に伸び縮みし始め
 顔には様々な人間の顔が浮かびあがる。



「悪魔の夢も喰らうんですか?コレは・・」



 ウィルが驚き、物珍しそうな目で、
 女に憑いたものを観察している。



「ええ条件によっては。
 特に悪魔が絶望の縁にあり、
 その魂や身体が弱っているときには・・」



 ウィルは、この横に立つ、高慢で、
 いつも嘲笑的かつ享楽的な漆黒の悪魔に、
 とてもそんな状態があった事があるとは、
 想像だにできなかった。



「あの時とは、どの時の事ですか?」



 ウィルは全くの傍観者のように、平然と
 尋ねている。



「ふふふ、この男が、
 トランクに少年を詰め込んで、
 少年から盗まれた魂を探しに、
 方々旅していたときさ・・」


「ええ、あの時、
 私は自分の契約印ごと腕を失い、
 腕が再生する僅かな時間をついて、

 我が主の魂を喰らう前に、
 その魂を強奪されましたからね、

 どこぞの悪魔に」


「そしてお前はやってきた・・
 オレイニク公爵の館に、
 彼の不在をついて」



 突如女であったものはウォーと大地が
 振動せんばかりの低い呻き声をあげ、
 体の内側からめくれていき、
 中に真の暗闇が広がっていった。

 暗闇の奥深くに赤い目がひかり、
 地を這う音と、シュルッと舌を出し入れする
 音が聞こえて、
 黒い鱗が二、三片舞い降りてきた。

 もはや男とも女ともつかない声が響く。
 


「ええ、
 もう少し考えるべきでしたね。

 何故人間ごとき、オレイニク公爵家が
 何百年と守ることができたのか−−」


「我等はそれを守るために造られた存在。
 鍵を守るためだけに。

 そしてお前は禁忌に触れてしまった。
 もはやパンドラの箱は開かれた。

 我等の織り成す夢の中に、
 せめてもの希望を見つけるが良い」


「希望?
 さらなる絶望の間違いでは?」


「ふふふ、何の違いがあるというのだ」


「ともかく、こちらの世界に
 完全にお出でください。

 さもなければ、私には触れられませんよ」


「こちらの世界で、
 良いものを見つけたんだよ」


「大体想像はついていますが−−」


「そうさ、お前の小さく脆い、
 大切なご主人様だよ」