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永遠に失われしもの 第15章

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(...『聖なる遺物』だって〜?
 法王庁も人が悪い...

 まぁ...この刑事相手にはその説明でも
 十分かもしれないがねぇ...)


 葬儀屋は、聞いてない体を装いながら、
 前髪の奥で眼を光らせている。


「彼らの真の目的は、わかりません。
 が、もしそんなことになれば・・・」


「どうなるというのです?」


「法王庁の権威は失墜し、
 カトリックはおろか、キリスト教すら、
 信じるものはいなくなるでしょう・・・

 キリスト教自体が、
 かつてのローマ神話のように風化して、
 同じように扱われるでしょう。

 それに代わって、イルミナティの信奉する
 ものが、世界の三大宗教の一つを形成する
 ことになるかもしれません。

 いや、そうなればイスラム教とて
 根本を覆されるはず・・

 いわば・・世界の大混乱・各地で宗教戦争
 や内乱さえ、引き起こしかねないのです」



(アレを人間が手にするならば、
 そうなるかもしれないがねぇ...
 彼は悪魔だよ...)



 補佐官は、一旦言葉を切ってラウルの反応
 を見ている。


「そんなに、大きな結果を招くものなら、
 どうして法王庁は今までに、
 その鍵とやらを全て回収して、もっと、
 厳重に保管しなかったのですか?」

 
 ラウルの疑問から、補佐官は目の前の刑事
 が、事の重大さを正確に認識していると
 考え、ここまで話してよいのかと戸惑いを
 覚えつつも、ゆっくり話し始めた。


「ロッジは、イルミナティのイタリアでの
 活動を仕切っています。

 イルミナティは・・彼らのその豊富な人脈
 と有り余る国際的な資金で、いまや
 ヨーロッパのみならず、ほぼ全ての国に
 闇の組織を持ち、活動してるのです。

 英国の金融王、フランスの鉄道王から発したその資金は、幾多の戦争の度に増やされ、
 植民地支配でさらに巨額の富を手にし、
 いまやその合計は、ヨーロッパにある、
 全ての国家財産の何倍もにあたると言われています。

 そしてご存知のとおりヴァチカンは、
 1870年にイタリアによって、
 ローマ教皇領を没収されてから、
 急速に財政が悪化しました。

 そこにイルミナティは眼をつけたのです。

 仇敵である法王庁に秘密裏に、
 資金援助をすることで、
 内部から崩壊させつつあるのです。

 今や、法王庁内とてロッジやイルミナティ
 本部から人が送りこまれていることは、
 想像に難くありません。

 また枢機卿クラスとはいえ、
 油断はならない程なのです」


「なるほど。だから無理に回収して、
 敵にその存在と場所を知らせるより、
 放置したほうが、ましと・・・」


「もう実際にはほとんど使われていませんで
 したし・・
 金の鍵は、教皇の代理も務められる死番
 が常に身に着けて、用心していましたし

 棺人の家系であるオレイニク公爵家は、
 数百年もの間、守りぬいていましたから。

 銅の鍵は、金の鍵や銀の鍵に比べれば、
 価値の低い『聖なる遺物』しか
 封印・回収できないものだったので。」

 

「事情はよく分かりました。
 さっそくその線で捜査を始めます」


 執務室を退出しようとするラウル刑事に、
 教皇がためらいがちに尋ねる。


「刑事さん・・
 ああ、ラウルさんと言いましたね。

 捜査の内容は・・極秘で、私に直接報告
 頂けないでしょうか?

 先程補佐官が申したように、
 ローマ警察とて・・」


「分かっています」


 あの、漆黒の髪をした執事を逮捕する際の
 早すぎる調査資料の用意や、
 上層部の意向の速やかな決定から、
 確実にローマ警察も一枚噛んでいることは
 確かだった。


「なるべく単独で、もしくは信頼できる
 部下のみと捜査します。

 署長に報告書をそのまま提出するような、
 馬鹿なことはしませんよ」


 ラウル刑事は、したたかそうに微笑んだ。