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永遠に失われしもの 第15章

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どこまでも澄み切った青いイオニア海を一望する、シチリアのタオルミナの別荘の、
 鉄門の脇で、ブーゲンビリアが
 可憐な薄紫の花をつけている。

 さび付いた門をあけ、淡いブルーのルリマツリの花で囲われた小路を抜けると、
 薄いサーモンピンクの漆喰の壁の、
 別荘が見えてきた。


 地中海独特の陽光が、赤茶色の屋根瓦を、
 さらに一層鮮やかに見せている。

 白い漆喰に回りを覆われて、
 少し剥げかかった深緑色の木製の枠を持つ窓の中に、見慣れた姿を見つけて、
 セバスチャンは溜息を大きくついた。

 別荘のエントランスには、
 すでに先程の窓から移動してきた、
 ウィルがデスサイズを片手に微動もせず、
 立っている。
 


「不法侵入ですか−−」



 セバスチャンは、
 腕に、シエルを抱きかかえながら
 ウィルの方を見ようともせずに、
 脇を通り抜ける。

 

「先回りさせていただいただけですが・・
 勝手にうろちょろされては、困りますね」


 シエルを、主寝室の大きな天蓋のついた
 べッドにゆっくり下ろしても、
 セバスチャンの背後には、
 ウィルがぴったりとついている。


「物凄く、欝っとおしいのですが−−」



 セバスチャンは形の良い眉を上げ、
 露骨に嫌そうな顔をしている。



「仕事ですから・・私だって不快です」


「まさか、一日中こうしてる訳じゃ
 ないんでしょうね?」


「貴方は信用できませんからね・・」


「これでは、逆に逃げろと言ってるような
 ものではないですか?−−」



 鋏が開閉する金属音とともに、
 セバスチャンの白い喉元には、
 ウィルのデスサイズの刃が押し当てられ、
 一筋の血が流れ出る。


 
「妙なことは考えないように・・・ 
 さもなければ、監視中の事故ということで
 処理してあげても良いのですよ?」



 しばらくの間、双方にらみ合った後に、
 セバスチャンが大きく溜息をつきながら、
 言う。



「お茶でも召し上がりますか?」


「結構です。その手には乗りませんよ。
 そういう手管で、グレル・サトクリフの
 監視を抜けたのでしょう?

 幸い貴方がメモを残しておいてくださった
 お陰で、先に待ち伏せできましたが・・」


「せめて客人として、
 迎えて差し上げようとしましたのに−−
 
 では、貴方のことは
 今後は壁紙か柱のようにでも、
 考えることに、いたしましょう」



 そう言うと、横たわるシエルの顔に近づき
 愛おしそうに紅茶色の瞳で見つめながら、
 唇を寄せた。

 セバスチャンは、わざと赤い舌を
 長く細く出して、見せつけるように、
 シエルの耳朶から首筋まで舌を這わせる。



「気色悪い・・・悪魔同士で・・」


「ぼっちゃんは、私のものだということを、
 しっかり分かって頂きたいと思いまして」


「心配せずとも、私は害獣なんて、
 全く興味ありませんよっ!
 もう、やめなさい!汚らわしい・・・

 こんな年端も行かない少年に
 何してるんですか・・貴方は!」



 ウィルは、紅茶色の瞳に向かってデスサイズを伸ばすが、
 シエルの口に舌を差し込みながらセバスチャンは、それを片手で受け止め、
 それを瞬時に掴み、立ち上がって
 ウィルに近づく。
 


「そんな少年に、貴方は何をしたと?
 ぼっちゃんが今のような状態なのは、
 誰のせいだと?」


「仕事でしたから」


「貴方の仕事は、都合がいいものですね。
 それを理由にすれば、
 全ての責任を逃れられるとでも?」


「貴方だって、執事の仕事としてなら、
 どんな汚れ仕事でもこなすでしょうに」


 セバスチャンは、デスサイズの刃を離す。


「ふふ、違いありませんね」


 寝台にもどって、デスサイズの刃を、
 受け止めた際にできた手の傷から、
 流れ出る血を、シエルの口に垂らす。

 
「ふん、
 悪魔同士で傷の舐め合いですか・・」


 ウィルははき捨てるように、呟いた。